猫との暮らし
昔、小学生の頃、拾ってきた子猫を家で飼っていた事がある。いつも学校から帰ると“にゃ〜”と出迎えてくれた。ある日、学校から帰っても猫が見当たらないので母に聞くと父が猫好きな人に、その猫をあげたと聞いて、だいぶ泣きわめいたらしい。ぼんやりとした記憶の中で私もその事を覚えている。それからずいぶん長い間、猫と暮らした事は無い。もちろん犬も飼った事が無く私の生活する環境に動物はいなかった。
ところが、この数か月前から、猫3匹との暮らしが始まった。新しいハウスオーナーの家猫だ。真っ黒なアザラシのような猫(17歳)名前はロッキー、背中がリュウマチで曲がっていて歩く時に少し不自然な歩き方をする。でも一番の古株なので威風堂々とノッシノッシと肩で風を切って歩く。人が歩く廊下の真ん中にもデーンと座ってどかないので、こちらが踏まないように歩かないとならない。何となく貫禄がある。
2匹目の猫は白と黒の一番やせっぽちの猫(17歳)のミノ。この子は一番好奇心が強く一番活発だ。あまりに骨と皮で痩せているので癌かもしれないとハウスオーナーは心配していたが動きが素早くいつも私達が食べる食べものにも関心を寄せ、隙あらばテーブルやキッチンに飛び乗って人のご飯を食べようとする。だから料理をしている時は充分に注意しなければならない。背後に視線を感じて振り向くと真後ろにじっとごはんを狙って待っている。ハウスオーナーは優しい人なので、このやせっぽちの猫に“みゃ〜お”と催促されれば、一日に何回でも猫のご飯をあげてしまう。特にこの痩せている猫にはなおさらの事なのだと思う。ただ、食べた後からも‘みゃ〜お“ごはんちょうだい。を度々最速されるので、この猫は呆けてきたのかもしれないと疑っている。他の猫の餌まで食べて食べ過ぎては吐く事も度々ある。
そして3番目の猫はグレーヘアー(8歳】この猫が一番若い。名前はシュガー。臆病で怖がり屋なくせに、いつもアテンションが欲しくてペタペタとくっついてくる。一番毛が抜けるのがこの猫。仕事前はすり寄られると毛が付くので履いているスリッパの裏側を見せて拒否する。猫アレルギーのクライアントさんもいるので自分の部屋に入れないし自分の部屋のスリッパと家のスリッパを履き替えて気を付けている。このグレーの猫が一番太っていて動くとお腹がポテポテしていて床に付きそうに歩く。他の2匹は自分からもらった猫だけれどこのグレーの猫だけは、どこからか、やって来て一週間毎日この家に通いつめたらしい。この家に入れてくれと懇願したのでハウスオーナーが根負けして3番目の家猫として飼う事になったそうだ。結局、猫に魅入られてしまったのだ。猫の動物的本能として誰が自分を救ってくれるか、きっとわかっていたのだと思う。
毎朝、明け方の4時半には “みゃ〜お、みゃ〜”お“と鳴いてハウスオーナーを起こして餌を催促する。ハウスオーナーは一旦起きて猫の餌をやり再び6時まで寝る。
生き物と一緒に生活してきた人には生き物がいない生活空間は考えられないのだろうと思う。私が引っ越してきてハウスオーナーは長年出かけられなかった旅行に今月下旬から2週間行く事になった。何でもバストリップでイエローストーンあたりを回ってくるらしい。なので、もう少しすると猫3匹と留守番生活が始まる。朝と晩2回猫の餌やりと猫トイレと庭の水やり。ハウスオーナーは、その為にどっさり新しい猫の餌も買ってきた。餌にはシニアの猫用に骨にいいコンロイドチン、グルコサミンなどのサプリメントも入っていて消化に良さそうな柔らかいドライフードなのだそうだ。
今回は特別高い缶フードも何種類か買ってきている。人間の食べる缶フードよりも高いものもある。それにしても動物を飼うという事は自分の時間も制約されるし猫のフード代、掃除や維持費など知らない間に、かなりのお金を使う。
さて、今後、2週間もハウスオーナーがいなくなるわけだから、猫達はどんな風になるのだろう、、、私は4時半に起きて餌をやる事は無いので6時までは猫たちは待たなければならない。猫達の習慣が変えられればハウスオーナーも寝不足にならなくていいとは思うのだけれど、、、、猫は人をMissするだろうか?恐らく、人間が猫をMissしても猫は人間をMissしないだろうと思う。餌をあげる人がいる限り猫は呑気でお構いなしで我儘。それが猫の特徴だから仕方が無い。その代わり猫の存在は人間にとってまた違った愛情を引き出すものなのかもしれない。猫によって癒されている人も知っているし、また犬との暮らしで生活が良く変わった人も知っている。
其々人を癒すものは様々なものがあるものだ。
茶子 スパイス研究家 |