龍翁余話(358)「故意の食品異物混入犯に厳罰を!」
先日、翁の旧友A・Mさん(元美術大学教授)が主宰する『スケッチの会』の新年会に招かれた(東京・恵比寿駅近くのレストラン“T”)。A・Mさんとはもう30年来のお付き合いになるが、メンバーの皆さんと知り合ったのは2012年の5月「鎌倉の紫陽花巡り」の時だった。その後、数回、小旅行や食事会などでご一緒した(それらのことは『龍翁余話』でも紹介した)。3年前は8人のメンバーだったが現在は12人(うち、2組はご夫婦)、平均年齢は約73歳。主宰者(A・Mさん)が紳士のせいか、メンバーの皆さんは穏やかな人ばかり。いつも思うのだが、まるで翁は羊のファミリーの中に野犬が1匹(1頭)混じっているような雰囲気だ。いつか翁がそんなことを言ったら(皆さんは)「いえいえ、龍翁さんは私たちが言いたいことを代弁して小気味よく吼えて下さる“猛犬”です」――そこで翁、新年会の挨拶でこう述べた「私ごとき野犬が吼えても、それは野良犬の遠吠え、世の中に何ら影響を及ぼすことは無いと思いますが、それでも書き屋の良心として、“一犬(いっけん)虚(きょ)に吠ゆれば、万犬(ばんけん)実(じつ)を伝う”(1人がいい加減なことを言う(書く)と、世間の多くの人はそれを真実の事として広めてしまう危険性がある、の戒めの諺)にならないよう、一言一句を慎重に、と心がけています」・・・
当日(新年会)の参加者は翁を加えて9人、皆さん、健康を考えてアルコール類は控え目、
ビール風のノンアルコールでも雰囲気は上々。前述のように皆さん、平素は穏やかな人たちだが、今回は、あの食品異物混入事件が続いたせいか、話題はそれに集中、かなり白熱した。「食品の中に異物が混入するなどという事件は他国のことだと思っていたのに、衛生観念が強く、衛生環境に厳しいはずの日本でも起きるのだから、私たちは、日本製の食品といえども安心出来ませんね。1人ひとり、1品ごとに用心しなければ」「いつから、こんな事故・事件が起きるようになったんでしょうね」。
食品の異物混入事件は、最近になって急に増えた訳ではない。財団法人食品産業センターによると、企業や自治体が公表した事例だけでも昨年1年間で81件もの異物混入が報告されている。混入物事例の内容は「金属・金属片」が32件(39.5%)、「虫」が8件(9.9%)、このあと「プラスチック片」「アルミ片」などが続く。これらの件数は、ほぼ毎年(同じような件数で)起きているそうだ。更に、消費者からの訴えとなると、その件数は激増する。全国から国民生活センターに寄せられた食品への異物混入に関する相談件数(情報提供)は、過去5年間、毎年(年間)1,500〜2,000件で推移しているとのこと。思うに、食品への異物混入事件は、永久に無くならないのではないだろうか?だとすれば、メンバーの皆さんが言うように、食に関してはメイドイン・ジャパンの“安全神話”は錯覚であった、と言うしかあるまい。「業者(製造・流通・小売)のミスばかりでなく、飲み物や食べ物に異物を混入する馬鹿者もいます」「真面目な企業の営業妨害だけでなく、人の健康や生命を脅かす卑劣な犯罪には厳罰を科して貰いたい」――その通りだ。このままだと2020年の東京オリンピックを待たず、外国人観光客から「日本の飲食物は危険だ」と言う噂が広がり、日本食品に限らず日本国自体の信用を失墜させる虞がある。そこで翁も言いたい――「政府や行政が行なっている“食品衛生監視指導”を強化して“業者ミス”による異物混入の根絶を図るのは当然だが、故意に異物を混入して当該業者への業務妨害や消費者を恐怖に陥れる“馬鹿者”に対しては国籍・性別・年齢を問わず厳罰に処すべきだ」と。
食品への異物混入に関わる犯罪行為の“罪名”を挙げてみると、まず『威力業務妨害罪』が考えられる。この場合の“威力”とは、直接的・有形的なものから文書やインターネットなどによる犯罪予告も含まれる。似たようなものだが『信用毀損罪』というのもある。虚偽の風説を流布し、または偽計を用いて人や企業の信用を毀損した罪。更に『名誉毀損罪』も該当するだろう。その会社や店の評価を下げるような噂を世の中(不特定大多数)にばら撒き、当該企業や店の名誉を著しく傷つける罪。ほかに『器物損壊罪』(店内等に陳列してある食品等に何らかの手を加え本質を変える行為)。もう1つ『傷害罪』も適用していいだろう。人の身体(健康や生命)を脅かす故意の異物混入は、りっぱな『傷害罪』である。以上は翁が知ったかぶりで並べた“罪名”だが、専門的に見れば違うかもしれないし、もっとほかにもあるだろうが、いずれにしても翁が気に食わないのは、どの刑も「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」という、あまりにも軽すぎることだ。当該業者(企業や店)が商品回収や信用回復のために多額な費用を放出したり、実質的な営業減収など莫大な経済的損失を被ったり、倒産・閉店に追い込まれて従業員家族を路頭に迷わせたり、消費者に心理的脅迫を与え食生活を脅かしたり、国際社会に対して“日本国の信用”を失墜させるような犯罪に、この程度の軽い刑で済まされたら、たまったものではない、というのが翁の感想。「ここは1つ、皆さんで“故意による食品への異物混入犯罪の刑罰”について議論しましょうよ」ということで新年会は盛り上がった。
“異物混入”が、故意によるものではないとしても“事件”が発生(発覚)したら企業は直ちに国民(消費者)に対して公表し、その原因究明をしなければならないのが“企業の社会的責任”である。説明の方法としては活字(新聞・雑誌)、電波(テレビ・ラジオ)のメディア利用(あるいはメディアから要求される記者会見)がある。翁は常々思っているのだが、企業人や政治家、公共団体職員などは一様に“面(つら)出し説明”(テレビでのお詫び会見)が実に下手だ。まずお詫び言葉を述べて頭を下げるのだが(翁には)誠実さ・真摯さが伝わらないことが多い。それどころか(何様だと思っているのか)“上から目線“でモノを言う奴もいる。(常に”上から目線“の翁が言うのだから間違いない)ああ、これでは国民(消費者)の心情(印象)を悪くするばかり、記者会見が逆効果になることもある。普段は温和な羊ファミリー(スケッチの会)の皆さんも、今日ばかりは翁以上に吼えまくった(熱のこもった)新年会であった・・・っと、そこで結ぶか『龍翁余話』。 |