家庭薬
昔から我が家の薬箱に入っていたもの…思い出してみると浅田飴、キンカン、サロンパス、ラッパのマークの正露丸、エビオスそして太田胃散などが入っていた。箱を開けるとプ〜ンと生薬と漢方薬の混じったような独特な匂いがした事を覚えている。先日、クライアントさんの一人から今度、日本に帰ったら正露丸を買ってきて欲しいと頼まれた。先週は、また他のクライアントさんが日系のマーケットで太田胃散を買ってきて欲しいと頼まれた。2人とも日本の昔からあるその薬が一番安全で効くのだと言う。以前、隠し味に太田胃散をカレーに一振り入れるのだと聞いてびっくりした事がある。成分を見て納得したのだが、今回も改めて太田胃散の成分を今一度、調べてみた。桂皮、これはシナモン。消化に良く正露丸にも確か入っていた記憶がある。ウイキョウもスパイスで使うフェンネル、ニクズクはナツメグ(ハンバーグにも使うスパイス)、丁子はクローブ(クリスマスのシーズンにオレンジに刺して飾ったり、ホットアップルサイダーに入れたりして香りを楽しむ)、昔、温めたブランデーにこのクローブを入れて飲んでいた人がいた。
聞くと胃に優しいからと言っていた。チンピはオレンジの皮、日本では温州ミカンの皮が使われるようだ。ニガキ、これは初めて聞く生薬の名前だ。名前のごとく強い苦みのある落葉高木だそうだ。ゲンチアナも聞いた事が無かったけれど胃薬に良く使われている生薬らしい。りんどう科の植物で綺麗な青い花が咲くようだけれど使うのは根の方らしい。太田胃散には、これら7種類の生薬が入っているのだ。そして、そこに炭酸水素ナトリウム、沈殿炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、ビオチアスターゼ、メントールなどが配合されている。この長年、家庭薬として愛されてきた太田胃散の歴史を見てみたら明治11年、胃弱で悩んでいた太田信義氏が処方された胃薬の効き目に感動して創立したのが始まりだそうで100年以上の歴史を持つ薬なのだそうだ。この薬のルーツはオランダの名医が作り英国で処方されたものを日本人に合うように応用したものなのだそうだ。欧米の肉食文化に必要だったスパイスを生薬として発展させた先人たちの知恵に感心してしまう。そして、そのスパイスや生薬が健康に育つ環境の保持、保全に努める知恵も今は必要だ。
茶子 スパイス研究家 |