美味しい病院食
TVをつけると、大抵どこかのチャンネルで食べ物の番組をやっている。どこの店の何が美味しいとか、今流行りのグルメレストランをタレントさんやリポーターの人が紹介している。ところが最近はレストランと言っても病院の美味しいレストランがひそかな人気のようだ。アメリカでは“ホスピタルフード”と言ったら“まずいけれど病院食だから仕方が無い”という負のイメージがある。もちろん少し前は日本でもそうだったと思う。でも日本では、最近そのイメージを払拭するように病院を訪れた患者の家族や友人たちにも喜んで食べてもらえる美味しいレストランが病院内に出来ている。私の友人は数年前に1週間ほど入院した時に期待していなかった病院の食事が案外、美味しかったと言っていた。今回、母の検査で訪れた病院のレストランでも薬膳カレーがメニューにあって売店ではそのドクターズカレーなるものが売られていた。病院食もずいぶん変わった。入院している患者さんの為に美味しい病院の食事を作ろうと栄養士とホテルシェフが共同で開発したレシピをもとにメニューを作り始めたのだ。その様子を取材したTV番組を見た事がある。すごいと思うのは入院している患者さん1人1人の体調やコンディションに合わせてメニューが作られている事だ。その上、暖かいものは暖かく冷たいものは冷たくとちゃんと管理されているのだ。最近では温冷配膳車というすぐれものがあちこちの病院で活躍しているらしい。特別食事制限の必要ない患者さんには食事のメニューも2種類から選べるようになっていて細やかな日本ならではのサービスだ。
退院後も体調管理の為に病院で食べていたような食事のメニューやレシピが欲しいと患者さんからの声で出版された本があると聞いてその本を集めて見てみた。どの本も高血圧や糖尿病、高脂血症と様々な病気に合わせたメニューが揃っている。塩分量、砂糖カロリーの量まで詳しく書いてある。基本は塩分を控えること、その為にはダシが決め手で薄味でもきちんと旨みのあるダシで味付けする事が大事だと書いてあった。和風だし、洋風だし、中華だしとバラエティに富んだメニューが普通の料理本のようだ。
旬の食材を使って彩を良く、そして目で見ても楽しめるように器にもこだわっている。
飽きられないように常に新しいメニューを作っていく事などなど…まるで料亭のレストランのような繊細な気配りまでされている。これなら患者さんの食べる意欲がわきそうなメニューだ。美味しいと感じて食事を楽しめたら免疫力があがって早く回復出来そうだ。病院を訪れる人にとっても病院のレストランが美味しいと気分まで明るくなるしささやかな楽しみが増えていい。そんなわけで最近は病院内のレストランで食事をする事が多くなった。
茶子 スパイス研究家 |