龍翁余話(369)「値上げラッシュと負担増」
百花繚乱に心を浮き立たせ、新しい年度の始まりに胸を膨らませるはずの4月なのに、あちこちから「え?」「なんで?」「こんなに?」「これじゃ、やっていけないよ」などの悲鳴が聞こえる。庶民の財布を直撃する『値上げラッシュ』や『負担増』が始まったのだ。消費税率が8%に引き上げられてから1年。給料の伸びは物価上昇に追いついていないばかりか、あれも値上げ、これも値上げ、おまけに、あれも負担増、これも負担増――4月からの値上げや負担増となる一例を挙げてみよう
まず<生活面>では、乳製品は明治、森永乳業、雪印のバター、チーズ、ヨーグルト、クリームなどが2.5%から8.2%値上げ。食用油は日清オイリオ、J−オイルミルズなどが1キロ30円の値上げ。ケチャップのカゴメ、キッコーマンが4%から13%の値上げ、輸入小麦は政府が売り渡し価格を3%値上げすることで日清製粉は6月から業務用のパンに使う強力粉を25キロ当たり平均45円、菓子などに使う中力粉・薄力粉も25キロ当たり125円も値上げする予定だとか。毎朝、パン食の翁、パン、バター、チーズの値上げは甚だ痛い。値上げラッシュは他にもアイス業界、自動車保険、外食業界、牛丼業界、電気料金など枚挙にいとまがない。はてはディズニーランドまでも・・・(値上げは業者の経営問題だが「原材料の高騰さえなければ、出来れば値上げしたくない」が業者の本音だと聞く)。
<社会保障面>では、65歳以上の介護保険料が、現在の月平均4,972円から5,000円台半ばに(月500円前後の負担増)。国民年金保険料が月340円引き上げられて15,590円に。一方、介護サービス提供事業者に支払われる介護報酬が全体で2.27%引き下げられ、介護サービスの低下が心配される。子育て給付金も、現行の子ども1人当たり年10,000円が3,000円に大幅削減、生活保護(生活扶助費)も削減されるもよう。このような現象だけを見ると(翁が好きな時代劇の)悪徳大名や悪代官が領民を痛めつける構図によく似ている。政府はいったい国民にどれだけの犠牲を強いるつもりなのか?政府(厚生労働省)は「消費税率引き上げによる増収分は、全て社会保障の充実・安定化に向けられる」と謳っていた。国民は“社会保障の充実・安定”の言葉に乗せられて消費税率8%を(しぶしぶ)容認した。そこで――平成26年度の3%増税に伴う増収額5兆円の使い道を調べてみた。まず<基礎年金国庫負担割合2分の1>2.95兆円(これは多分、平成24年度・25年度の基礎年金負担分を補うためのものだろう)。<社会保障の充実>0.5兆円(子ども・子育て支援、医療介護の充実、年金制度の改善に使う)。<消費税率引き上げに伴う社会保障経費の増>0.2兆円――
国家予算の配分とか、増税による増収分の使い道などは、翁は専門家ではないので詳細はよくわからないのだが、増収分の配分決定を見ると実に不可思議な印象を覚える。つまり「3%の増税は社会保障の充実・安定のため」と謳っておきながら、65歳以上の介護保険料の値上げ、国民年金保険料の値上げ、子育て給付金や介護報酬の大幅削減(いずれも国民の負担増)は大いに矛盾しているし、これは、表現こそ違うが(明らかに)税率3%アップとは異なる“もう1つの増税”である、と思うのだが、どうだろうか?「増税しない代わりに、介護保険料や国民年金保険料の値上げ、子育て給付金や介護報酬の値下げを認めてくれ」ということなら、何とか理解出来るのだが・・・もう1つ<後世への負担のつけ回しの軽減>1.3兆円。これは高齢化等に伴う税収の自然増が見込めず安定財源が確保出来ない現状を勘案して、後世へのツケを減らすための貯金であるならば、まあまあ頷ける。
平成26年度の税率3%アップ(計8%)と諸物価上昇で国民の消費生活がますます冷え込もうとしている矢先、去る3月31日の参議院本会議で2017年4月の消費税増税(8%から更に2%アップの10%)が確定した。政府よ、自民党よ、公明党よ、そして小銭(1円)の有難味を知らない(自分の財布が1万円札で満杯なのに)頭の中が空っぽの国会議員たちよ、お前たちの不徳(悪徳)のせいで領民(国民)はアップアップしている。聞くところによると、経済同友会のメンバーの中に消費税10%どころか17%まで求めているバカがいるそうだ。いずれ翁、そんなバカ連中の実名を挙げて“現代風晒し首”にしたいくらい腹を立てているのだが、翁如き野人では、どうにも歯が立たない。マスコミ(新聞・テレビ)とて大企業相手に論戦を挑むようなことはしない(広告収入に影響するからだ)。誰か、ムシロ旗を立てて政府や大企業を攻撃する一大デモを敢行して貰いたいが、近年の日本人は極めて大人しく紳士的で(実は腑抜けになってしまって)争い事を好まない。「庶民の暮らしを知らずして国政が出来るものではない」と庶民の中に入り込み、悪人たちを懲らしめた“暴れん坊将軍”(徳川吉宗)や越後のチリメン問屋の隠居に扮した水戸黄門が出て来て欲しいものだ。(いずれも“作り話”だが・・・)
前述のように、翁は国家予算や税金配分などについては全くの素人なので解釈違いがあるかも知れなし、政府は“国を滅ぼさないように”国家経済基盤確立のための百年の計“を立てていると思うが、一般庶民は百年先より“今の暮らし”を優先したいと思っている。それを“国民エゴ”と言う勿れ。せめて食料品等に対する軽減税率の導入は考えてもいいのではないか。国民は「社会保障と税の一体改革」で消費税増税が社会保障の充実に繋がると思っていたのに、現実に起きたのは(もろもろの)負担増と給付・サービスの抑制だ。現役世代に負担が集中する現状のままでは社会保障が立ちゆかなくなるのは明白だが、制度が存続しても、セーフティーネットの名に値しなければ元も子もない。高齢者でも支払い能力に応じた負担を求める場合もあるだろう。だが、給付と負担のあり方について国民が納得できる全体像も無く、ただ、やたらに痛みを強いることは絶対に許せない。ところで安倍首相の外遊時のばら撒きの多さが気になる。“国際貢献”も結構だが最優先すべきは“国内貢献”ではないか・・・っと、そこで結ぶか『龍翁余話』。 |