最近読んだ本(板坂元著「板坂元のアメリカンルール」)の受けうりですが、ジョンズ・ホプキンズ大学のアンドリュウ・チャーリン博士たちがアメリカ生命保険委員会のために行った研究で、人生はおおよそ次の九段階に分かれるのだそうです。
(1) 両親と一緒に住む
(2) 両親の離婚後、母親と一緒に住む
(3) 母親が再婚して、母親・継父と一緒に住む
(4) 一時、ひとり暮らし
(5) 異性と同棲
(6) 結婚
(7) 離婚してひとりで住む
(8) 再婚
(9) 配偶者の死後、ひとりで暮らす
多くの日本人にとって、少なくとも私個人にとっては、このような分類に従えば、人生は三段階『(1)、(4)、(6)、(9)』で充分な気がしますが、アメリカ人にしてみれば、上記のように九段階に分類するのが現実的なのでしょう。折角の一生を何も苦労して9つもステップを踏んで過ごすなど「ご苦労様」なことだと思いますが、私の周囲のアメリカ人にも、この「ご苦労様」の人生行路を歩んでいる人を多くみかけます。
しかし、個を重視し、生き方の多様性に寛容なアメリカ的発想からすると、人生は十人十色であり型にはめるべきものではなく、上記の九段階も必ずしも『九』にこだわらず、種々なステップがあるのが当然だと解釈するのが正しいのかもしれません。
人生とは一人一人みな違うものであり、その人の生まれ、育ち、境遇、環境、人生観などにより生き方が異なります。だから、九段階(多段階)が良いのか四段階が良いのかという比較自体が意味をなさないことだと思います。また、日本人の多くは(1)の「両親と一緒に住む」前に「祖父母(両親の親)と一緒に住む」、また(9)の「配偶者の死後、ひとりで暮らす」のではなく、「子供や孫たちと一緒に暮らす」というステップを踏む人も多いと思います。要は幾つのステップであれ、「吾が人生に悔いなし」と胸をはって人生を終了できたら良いということになるのではないでしょうか。
夫婦の関係についても一言で表現は出来ません。以前この欄で夫婦の一生はおおよそ以下の段階を経ると書きました。
(1) 結婚当初10年間:愛の時代。
(2) 次の10年:努力の時代。
(3) 次の10年:忍耐の時代。
(4) 次の10年:あきらめ、惰性の時代。
(5) その後:感謝の時代。
最初の「愛」はともかく、次からの「努力」、「忍耐」、「あきらめ、惰性」と苦難の(?)道程が続きますが、夫婦二人で協力して苦難を乗り越えれば最後に待っているのが「感謝の時代」だと理解すれば、苦難も決して無駄ではないと知り、希望が生まれます。
テレビの芸能ニュースで有名タレントやアイドル達の熱愛報道や婚約・結婚の話題が報じられるとき、当事者のコメントとして出てくる言葉の多くは「彼(彼女)といると楽しい」、「彼(彼女)は私を幸せにしてくれる」といった内容です。相手が私を幸せにしてくれるかどうかがポイントになっている内容が中心になっています。二人でどんな苦難にも耐える覚悟は殆ど感じ取れないコメントです。こんなコメントの有名人は早ければ3ヶ月、遅くても3年ほどで涙の離婚会見が待ち構えているのがほとんどです。
先日、友人の娘さんの結婚披露宴に招かれ、ひとこと祝辞を述べる機会がありました。私の年齢に達すると歯の浮くような美辞麗句の祝辞は必要ありませんし、また期待もされませんので、あえて厳しいことを述べさせていただくことにし、上記の夫婦の関係5段階を説明して次の通り締めくくりました。 ―――「結婚式とは恋愛時代と違って、社会・家庭に対する責任と、お二人を待ち構えている艱難辛苦を一緒に乗り切る覚悟を宣言する儀式なのです。そうすれば最後に必ず『感謝の時代』がやってきます」
河合将介(skawai@earthlink.net) |