『笑い』が免疫を高めたり悪性ストレス緩和などに効果があるだけでなく、血流への好影響をももたらすという話を数回前のこの欄でご紹介しました。
今度は『笑い』が血糖値の上昇を抑制することが確認されたとする記事をみつけました。(羅府新報、 Mar. 18,’05 共同ニュース配信)
この記事によると、国際科学振興財団(茨城県つくば市)がこのほど、吉本興業の協力で行った実験で『笑い』が食後の血糖値を抑えるとの結果をまとめた、とありました。
昨年12月、インシュリンの分泌量が少ないか作用が弱い2型糖尿病患者23人と、健常者15人を対象に実験が行われました。同じメニューの昼食を摂ってもらった後、一日目は医学教育用ビデオを、二日目は吉本興業所属の「ザ・ぼんち」による漫才を45分間ずつ見せ、食前と食後の血糖値(血液1デシリットル当たり)を比較する方法で調べました。
糖尿病患者では、ビデオの場合、平均113ミリグラム上がったが、漫才の場合は同89ミリグラムの上昇にとどまった。健常者の場合、ビデオでは同11ミリグラム上昇、漫才では同8ミリグラム減少という結果でした。
そして、記事は実験の結論として「この実験では特殊な遺伝子が血糖値抑制に関与したとみている」としており、実験をした財団代表の言葉として「心が体に影響を与えることは間違いない。笑いを含む心の動きと遺伝子発現の関係を調べ、将来は臨床に応用したい」と紹介しています。
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今回の「笑いと血糖値」に関する記事で私が興味をひかれたのは、『笑い』によって体内のインシュリンの分泌量が増えたから血糖値の上昇が抑制されたのではなく、遺伝子の働きによるものだと結論付けている点です。
近年、遺伝子についての研究が進むにつれ、遺伝子には親から子へ情報を伝えるという、これまで知られていた機能の他に、体内で生命の維持に必要な物質を作り出すという、もう一つの働きがあることが知られてきたようです。また、体内にある膨大な遺伝子のうち、実際に活動している遺伝子はせいぜい全体の10%程度であり、残りは殆ど休眠状態なのだそうです。今回の「笑いと血糖値の実験」は『笑う』ことによって血糖値をコントロールする“休眠遺伝子”を目覚めさせる実験だったとも言えるようです。
親から受け継いだ遺伝子を有効に活用するかどうかは親の責任ではなく、受け継いだ本人の意識の問題だったかもしれません。
糖尿病と長年付き合っている私もこれまで「生活習慣病は親の遺伝子のせい」と決め付けていましたが、間違っていたようです。親から受け継いだ“良い遺伝子”を眠りから目覚めさせ、スイッチ・オンにするのは私自身だったのでした。私にとって遺伝子の謎がまたひとつ増えたと同時に、自分自身の意識改革の必要性を改めて感じさせられているところです。。
河合将介( skawai@earthlink.net
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