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No.469          Ryo Onishi               5/8/2005   

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河合さんの さくらの独り言 川柳 & コント 森田さんから ホームページ
成岡流お酒 雑貨屋のひとり言 LA観光スポット 編集後記 バックナンバー
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雑貨屋のひとり言

連休の最終日の5日、久しぶりに松村さんご夫妻と高槻の吟醸ミュージアムで会いました。奥様のそよ乃さんが5月8日に渡米(シアトル)し、お二人の新しい生活が始まるということで、お別れ会でした。でもこれでシアトルに行く口実ができ、ある意味で喜んでいます。吟醸ミュージアムがそう遠くない時期に閉館するとのことで、寂しくなります。まだ行かれたことがない方は早めに行かれることをお勧めします。ご連絡いただければお付き合いも可能です。(R.O.)

笑いで糖尿病の予防が出来る? 

 『笑い』が免疫を高めたり悪性ストレス緩和などに効果があるだけでなく、血流への好影響をももたらすという話を数回前のこの欄でご紹介しました。
今度は『笑い』が血糖値の上昇を抑制することが確認されたとする記事をみつけました。(羅府新報、 Mar. 18,’05 共同ニュース配信)

この記事によると、国際科学振興財団(茨城県つくば市)がこのほど、吉本興業の協力で行った実験で『笑い』が食後の血糖値を抑えるとの結果をまとめた、とありました。
昨年12月、インシュリンの分泌量が少ないか作用が弱い2型糖尿病患者23人と、健常者15人を対象に実験が行われました。同じメニューの昼食を摂ってもらった後、一日目は医学教育用ビデオを、二日目は吉本興業所属の「ザ・ぼんち」による漫才を45分間ずつ見せ、食前と食後の血糖値(血液1デシリットル当たり)を比較する方法で調べました。

 糖尿病患者では、ビデオの場合、平均113ミリグラム上がったが、漫才の場合は同89ミリグラムの上昇にとどまった。健常者の場合、ビデオでは同11ミリグラム上昇、漫才では同8ミリグラム減少という結果でした。

 そして、記事は実験の結論として「この実験では特殊な遺伝子が血糖値抑制に関与したとみている」としており、実験をした財団代表の言葉として「心が体に影響を与えることは間違いない。笑いを含む心の動きと遺伝子発現の関係を調べ、将来は臨床に応用したい」と紹介しています。
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 今回の「笑いと血糖値」に関する記事で私が興味をひかれたのは、『笑い』によって体内のインシュリンの分泌量が増えたから血糖値の上昇が抑制されたのではなく、遺伝子の働きによるものだと結論付けている点です。

近年、遺伝子についての研究が進むにつれ、遺伝子には親から子へ情報を伝えるという、これまで知られていた機能の他に、体内で生命の維持に必要な物質を作り出すという、もう一つの働きがあることが知られてきたようです。また、体内にある膨大な遺伝子のうち、実際に活動している遺伝子はせいぜい全体の10%程度であり、残りは殆ど休眠状態なのだそうです。今回の「笑いと血糖値の実験」は『笑う』ことによって血糖値をコントロールする“休眠遺伝子”を目覚めさせる実験だったとも言えるようです。

親から受け継いだ遺伝子を有効に活用するかどうかは親の責任ではなく、受け継いだ本人の意識の問題だったかもしれません。

糖尿病と長年付き合っている私もこれまで「生活習慣病は親の遺伝子のせい」と決め付けていましたが、間違っていたようです。親から受け継いだ“良い遺伝子”を眠りから目覚めさせ、スイッチ・オンにするのは私自身だったのでした。私にとって遺伝子の謎がまたひとつ増えたと同時に、自分自身の意識改革の必要性を改めて感じさせられているところです。。

                                                               河合将介( skawai@earthlink.net

さくらの独り言第一章

何事も、「最初が肝心」とか「基本が大事」とは、論ずるに及ばぬ万国共通の常識だ。しかし、どうも私は、これをすぐに忘れてしまう。だから大怪我や失敗をして、痛い目に遭遇する。そしてようやく、前述を思い返すが、しかしまた忘れてしまう。そうした同じ繰り返しをしながら、歳をとっている気がする。「初心忘れるべからず」とか「三つ子の魂百まで」とはいうが、最初のページや基本には、その真髄を示すものが多いことに気付づく今日この頃だ。第1章、どんなに長編の小説や音楽でも、実はここに、徹頭徹尾貫かれているとても大切なKEYがある。

下手の横好きのくせに、寝ても覚めてもゴルフに夢中の私の毎日だ、とは、この「独り言」で幾度か呟いてきた。最近は、単にボールを打つということだけではなく、ゴルフプレーとその周辺の真髄探しの人生学習をも楽しんでいる。ゴルフの練習場に独りで行く時は、自分なりのテーマを持って始終ボールを打つことだけだ。しかし、コースに出る時は、ボールをどう打てるかということ以前の、様々な事項に課題を見出す。それは、季節天候という自然条件やコースという環境面、自分の精神や身体の状態という健康面、そして共にプレーする人たちとのコミュニケーションなど、つまりは自分自身のあり方である。自分も含め、人それぞれの性格があるように、人それぞれのゴルフがあり、それぞれが組み合わさって、その日のプレーが進行する。時に、プレーの上手下手に関係なく、戸惑いと不愉快な場合があったり、またはとても充実して楽しい場合があったりする。そんな時、昨年、兄貴分玉三郎の紹介で私にゴルフの手ほどきをしてくれたゴルフ暦30年の老人N氏が、最初に力説した言葉を思い出す。それは、「ゴルフにとってまず大切なことは、調和・礼節(マナー)」だと。これこそ、私のゴルフの第1章に刻まれた言葉となっている。

ところで、どのスポーツにも規定があるように、ゴルフにも「ゴルフ規則」がある。この「ゴルフ規則」は、ロイヤル・アンド・エインシエント・ゴルフクラブ・オブ・セントアンドルーズ(R&A)と全米ゴルフ協会(USGA)によって4年毎に見直し・改定がされる。この世界統一の正式なルールブックであるこの規則を、日本ゴルフ協会によって日本語訳したものが日本では発行・使用されている。この規則は、3つの章と付属規則からなっていて、第1章は『エチケット』について、第2章は『用語の定義』、第3に『プレーについての規則』、そして付属規則やアマチュア資格規則・規定変更部分要点という構成だ。改めて読んでみて、何よりも興味深いことは、第1章の『エチケット』だ。ゴルフの精神や安全の確認から語られるゴルフの心得についで、プーレヤーに対する心配り、プレーのペース、コース上の先行権、そしてコースの保護という順番で記されている。このゴルフとはいかなるものかという定義「ゴルフゲームは、規則に従って1つの球を、クラブを使ってティイング・グラウンドからプレーし、1または連続する複数ストロークでその球をホールに入れることから成る。」は、第3章冒頭でやっと出てくる点だ。極端な言い方をすれば、エチケットを守れないプーレヤーは、ゴルフをする資格がない。つまり第2章以下は不要だということになる。第1章の内容は、要するに自分以外の人への配慮と迷惑をかけないという、社会生活ではごく当たり前のもっともなこと。しかし、なかなかそれが、波乱万丈のコースプレーではアマプロ関係なく難しい課題となることも事実だ。ルールブックの第1章を読みながら、私のゴルフの第1章第1ページに刻まれた「調和と礼節(マナー)」を、改めて心に刻んだ。

さて、「ゴルフ規則」第1章を読みながら、以前このさくらの独り言でも紹介した『人生で必要な知恵は、幼稚園の砂場で学んだ』(ロバート・フルガム著)を思い出した。本文より一部抜粋すると、「何でもみんな分け合うこと。ずるをしないこと。人をぶたないこと。使ったものはかならずもとのところに戻すこと。ちらかしたら自分で後片づけをすること。人のものに手を出さないこと。誰かを傷つけたら、ごめんなさい、と言うこと。食事の前には手を洗うこと。トイレに行ったらちゃんと水を流すこと。焼きたてのクッキーと冷たいミルクは体にいい。釣り合いの取れた生活をすること。毎日、少し勉強し少し考え、少し絵を描き、歌い、踊り、遊び、そして、少し働くこと。毎日かならず昼寝をすること。おもてに出るときは車に気をつけ、手をつないで、はなればなれに。ならないようにすること。不思議だな、と思う気持を大切にすること」。私は、幼稚園の頃でも砂場で多くのことを学んだし、今、ゴルフ場の砂場(バンカー)でも様々なことを学んでいる。それはゴルフのルールブック第1章と同じ、人生の第1章の最初のページだと、つくづく思う。マナーやエチケット、それは全ての「第一章」ってね・・・と呟くさくらの独り言。

kukimi@ff.iij4u.or.jp

川柳 & コント(東京・成近)


( 川 柳 )

みどりの日 昭和の森の濃く薄く

遡上するごと千匹の鯉のぼり

タンポポも今年限りの設計図

グリーンに映える藍色 さくら色

赤く赤くつつじ燃えおり事故現場

( ニュースやぶにらみ )

「ボーリング大会、宴会」
ダイヤ通りです −JR西日本

「観光客受け入れ再開」
あすなろも順調に育っています −三宅島

「ブレア首相三期目へ」
そちらも中二階が賑やかそうで −小泉首相

河合成近
nakawai@adachi.ne.jp

http://www.adachi.ne.jp./users/itsukabz/index.htm

森田さんから

花の都にて( 1 )
 
 ローマのテルミノ駅から特急に乗った。
 ときどき丘陵のいただきに教会の鐘楼や崩れかけた城壁があらわれてはうしろに飛
んでいく。糸杉の列や笠松の群が車窓を流れる。イタリア中部の街フィレンツエまで
二時間あまりで着いた。
 予約していた都心のホテルにチェック・インしたのは昼前である。部屋で一休みし
ていると突然、教会の鐘の音が鳴りはじめた。心に染み入るような音色である。窓の
外を見るとレンガ色のクーポラが見えた。私たち家族三人、何かに突き動かされるよ
うにガイドブックと地図を手に街へ飛び出した。
 石畳の小路を抜けると賑やかな大通りへ出た。少し歩いて右に曲がった。と、目前
に美しい建物がそそり立っているではないか。
 もしや、これが、あの有名な……。
 私は高鳴る思いでガイドブックを開いた。
 間違いない。『サンタ・マリア・デル・フィオーレ』、フィレンツェを代表する有
名な花の聖母寺だ。やわらかな陽が、白、緑、桃色の大理石を幾何学模様に組み込ん
だ壁面に映えて優美である。その上にホテルの窓から見えたレンガ色のクーポラが見
えた。1471年、ブルネレスキの考案にもとづいて完成した大聖堂の円屋根であ
る。
 さして広くもない聖堂前の広場で何千羽という鳩が餌をついばんでいた。突然、銃
声が続けざまに三発鳴った。と、いっせいに鳩が飛び立ったと思うと、花の聖母寺の
周りをグルグルと舞いはじめた。すばらしい光景に見とれていると、やがて鳩たち
は、青空の彼方へときえていった。しばらくすると、鳩たちはまた広場に舞い降りて
餌をついばんでいる。どうも見世物だったようだ。それにしても、なんと見事な演出
であろう。
 花の聖母寺のなかへ入ろうとしたら、袖を引っ張られた。見ると、入り口の横にい
た赤ん坊を抱いたジプシー女が、哀願と懇願の入り混じった眼で私をじっと見てい
る。小銭を与えようかどうしょうかと迷っていると、私の背後で女の怒る声がした。
驚いてふり返ると中年の人だった。怒声にひるんだのかジプシー女はつかんでいた私
の袖を離した。そのあとである。私は蚊の鳴くような声で「ドオント」といい「プ
リーズ」と、訳の分らないことをいってしまった。
 ステンドグラスから差し込むやわらかな陽が薄暗い聖堂を照らし、天球を思わせる
ドームが人々の声を吸い込んでは響きかえしている。壁際に電話ボックスのような箱
があちこちに置いてあるので、何だろうと思いながら見ると箱の下から足が覗いてい
た。修理でもしているのかと思い、なかを覗こうとしたら、
「ダメよ !  マミー」
 娘に叱られてしまった。「あれは懺悔室なのよ」という。
 祭壇の香炉からはかぐわしい煙がゆらゆら立ちのぼり、祈りを捧げている人たちが
いた。と、なにを思ったのか夫がつつっと祭壇前に行き片膝を立てた。そして手を合
わせ胸に十字をきったのだ。
「なにしているの、ダディは ! 」
 クリスチャンでもないのにねと、娘はしかめっ面をしていった。
 娘はクリスチャン系の私立校に通っている。私たちに信仰があったのではなく、た
またま学校が我が家から歩いて十分のところにあるというだけで選んだ学校である。
夫はいつも「オレは宗教というものは大嫌いだ」といっていたのに、あれは嘘だった
のかしら。夫の実家には仏壇があり神棚がある。キリスト教とは縁がなさそうだ。で
も子供のころ、白人の牧師がいる教会の日曜学校へ通っていた時期があるといってい
た。大学はキリスト教系だったから『キリスト教概論』をとらされたとも話したこと
がある。
 この程度の経験でも「先入主となる」となるのだろうか。
 だとすると、私だけがキリスト教とはまったく縁がなかったということになる。

  森田のりえ  noriem@JoiMail.com

 

 

成岡流お酒の楽しみ方 番外編

 《吟醸酒蔵みゅーじあむ13年を回顧する》 
 日本酒の味・香り・造りに感動!感動!  続編 
                                         吟醸酒蔵みゅーじあむ 館長 成岡 卓翁 
  
甲信越の酒 
  
 山梨県は、国産ワインやウイスキーで有名だが、吟醸酒では規模の大きい「七賢」が有名。ほかに「谷桜」もリーズナブルなお酒で人気。しかし、私が推薦したいのは与謝野晶子が詠んだ 
  
和歌から『春鶯囀(しゅんのうてん)乃かもさるゝの蔵』という、長い名前になっている蔵の「純米大吟醸」は味・価格面からもいける。 
 新潟県は、さすがに数ではたくさん有りすぎて絞るのに苦労する。取り敢えずお勧めの銘柄を列記しますと「久保田」「吉乃川」「越乃白雁」「八海山「〆張鶴」「麒麟山」「緑川」「越乃景虎」「雪中梅」「北雪」それに一世を風靡した「越乃寒梅」など、上げればきりがない。 
 私が今気に入っているのは『根知男山』に『清泉』。特に清泉の「亀の翁・純米大吟醸」は、尾瀬あきらさんの劇画「夏子の酒」のベースになった蔵として脚光を浴びたが、酒質としては純米仕様でありながら新潟らしいサラッとした飲み口はさすがだ。私が尾瀬さんと一緒に「吟功績賞」を受賞した時にお聞きしたところでは、杜氏のモデルには後述する波瀬正吉さんが、ベースになっているらしい。 
  
北陸の酒 
  
 北陸と言えば、能登半島の先端部分になる珠洲市に能登杜氏組合がある。昨年は、組合の自醸清酒品評会が100回を数え、その記念で大々的なイベントが開催された。100年を越える杜氏組合の歴史は、現在形で「能登流四天王」を生み出した。 
 富山県の『満寿泉』を醸していた四天王・三盃幸一杜氏は引退され、人気だった『勝駒』を醸した川原康義杜氏も引退されたようだ。そのほか富山では「立山」「銀盤」がビックな地酒蔵である。 
 石川県もたくさんの地酒があり、ビック3に入る珠洲市の『宗玄』は、前出の波瀬さんの下で腕を磨いた坂口幸夫杜氏を迎えて、特定名称酒に力を入れだした。昨年は、若い杜氏の又川一彦さんと全国新酒鑑評会でアベック金賞を受賞している。 
 また『手取川』は山本輝幸杜氏と後継ぎの吉田隆一杜氏が頑張っていたが、藏元の吉田外志雄さんが相談役に退き、隆一さんが社長に就任されたので、リーズナブルな大吟醸「吉田蔵」はもう飲めないかも知れない。 
 その他四天王・中三郎杜氏と若き岡田謙治杜氏がガッチリスクラムを組んで醸している『天狗舞』も良いが、長年「菊姫」を醸し続け七年前に加賀市の『常きげん』に移られた、もう一人の四天王・農口尚彦杜氏は、仕込み水が硬水から軟水に変わって、最初は苦労されただろうが、今は若き蔵人たちと共に良い酒を醸しておられる。ただ問題は、農口さんの技が伝承されるのかどうかだ。 
 福井県にいくと、鑑評会の審査委員にもなられる?酒名人の藏元南部隆保さんの『花垣』を醸す畠中喜一郎杜氏の酒も良い。ほかに宮内庁御用達の『黒龍』や『梵』も凄いが、「黒龍」を造ってきた家(旧姓新谷)修杜氏が三年前から移った遙かに規模の小さい『白岳仙』が今脚光を浴びている。 
  
東海の酒 
  
 富士山の伏流水が到達する静岡県、ここを代表するお酒は何と言っても『開運』。(前号の表紙)能登流四天王・波瀬正吉杜氏が醸す美酒は、他を圧倒しているように思う。特に「能登流・波瀬正吉・大吟醸」は、ご自分の直筆(実は急に書けと言われたようでサインペンだが)のラベルゆえに波瀬さんのプライドをかけた銘酒である。 
 蔵にお邪魔した時に拝見したが22本ものタンクでこの大吟醸を仕込んでおられたのには仰天した。その後、何度かご自宅にお邪魔して歓談させていただいたが、奥さんの豊子さんがあればこそ、酒造りに専念できるのだということを肌で感じとらせてもらった。 
 前号冒頭でも触れたように、私が最初に呑んで傾倒することになった「純米大吟醸・おんな泣かせ」は、十数年前は「辛口酒」で居酒屋に人気で「割り当て」だったが、食用米が不作でタイ米を輸入した年に理由は定かではないが「甘口酒」になってしまった。 
 そのほか「磯自慢」「初亀」「志太泉」「正雪」「喜久酔」なども良いが、最近は『臥龍梅』の評判が良い。また、四月二一日行われた第一〇一回能登杜氏自醸清酒品評会で、波瀬さんを始め強豪を抜き去り見事一位になられた吹上弘芳杜氏が醸した『高砂』も評価できる。因みに富山の「満寿泉」の新杜氏堂目穣さんが二位に食い込んでおられる。 
 実は、先日埼玉県から来館されたお客さんが、静岡にはまだ良い酒があるから、送ってあげると言ってくださったお酒が届いた。「大吟醸・富士錦」さてどんなお酒か楽しみだ。   岐阜県では、辛口が今ほど脚光を浴びていない時期から辛口酒にこだわり造り始めた「三千盛」や、「雪中寒梅」が知られている。また、飛騨高山に幾つかの蔵が集中していて、鬼ころしの名では一番ランクの上のお酒を造る老田酒造店「飛騨鬼ころし・吟醸」は有名だが、平瀬酒造店の『久寿玉』大吟醸が良かった。一番お勧めは養老町にある『醴泉正宗』の「純米大吟醸」で、養老の滝伝説が彷彿とする。 
 愛知県にいくと、しっかりとした酒造りの理念を持っておられる『義侠』の「妙」は10年古酒のブレンドで、一枚ずつ藏元夫人直筆のラベルで、四合瓶で12,000円するが絶品。また純米造りの藏元として一文字名にこだわっている『蓬莱泉』の「空」が有名だがその上の「吟」は、奇麗な中に品格がある。しかし「純米大吟醸生」はもっと手応えがある。そのほか名古屋市内では、「東龍」も良いが、今頑張っているのは『醸し人九平次』。これもJALのファーストクラスで飲めるとか、パリの高級レストランで飲めるとか、吟醸酒が世界に羽ばたく、先鞭をつけている。 
 もちろん、今までも日本酒は海外に出ているが、その質として、私が評価できるのが「醸し……」の萬乗醸造だ。 
  
日本酒を持って海外へ 
  
 それというのも、開館以来平均すれば1年に1回以上のペースで「日本酒と世界の料理との相性を試す会」と称して、お客さん達と「日本酒」を持って海外に出ていった。10年間は隔年でアジアとヨーロッパに行き、中でも印象的だったのはイギリス・スペイン・スイス・イタリアそれに、私が尊敬する今は亡きマエストロ・チェリビダッケを忍ぶ旅は、生涯の想い出として今でも鮮明に記憶に残っている。 
 師の墓石を尋ねてお客さん達にも折ってもらった千羽鶴を携えて、パリ郊外のバルビゾン近くへ行った。その足でオーストリアに飛び、ウイーンを素通りして彼が愛しやまないブルックナーが納棺されているリンツ郊外の聖フローリアン教会に行った。その後、モーツアルトの生家があるザルツブルグ、そして、師のために建てられたガスタイク・ホールでミューヘン・フィルのコンサートを聴いた旅は、日々ワクワクするものだった。 
 もちろん、アジアの旅も親近感があって楽しかった。シンガポール、マレーシア、タイ、カンボジア、ベトナムそして、中国に韓国。いずれも持って行った日本酒を各国の代表的な料理との相性を試したが、その店のオーナーやシェフ、ソムリエは言うに及ばず、お客さんにも呑んでもらった。いずれも評価は高かったが、日本酒の本当の生酒が各国で呑めるようになれば「吟醸酒」が世界を折檻すること間違いないと確信する。 
 お客さんで某大学の博士がおられるか、少々温度が上がっても変化しない酵母を発見したと仰っているので、先進的な蔵でテストしてくれればと思っている。 
  
近畿のお酒 
  
 三重県では、開館のおりに「焼き鮎と一緒に呑むと美味い」といただいた『天下錦』の大吟醸はリーズナブルでいけるが、その上の鑑評会出品酒は、何度か金賞を受賞している。しかし、今はそのタンクを丸ごと買い取るところがあって、残念ながら手に入らない。 
 そのほか、尾瀬あきらさんにラベルを書いてもらった「るみ子の酒」もお陰で全国区になっているようだが、私はラベルから受ける印象とは違い、辛口なのが気になっている。三重では南部杜氏の高橋成男さんが醸す『瀧自慢』はどのランクもOK。そのはか「若戎」「半蔵」「黒松翁」も良いが、今話題性のあるのはボクサーの藏元が醸す「三重錦」。 
 滋賀県では、能登杜氏組合長の天保正一さんが醸す『喜楽長』や、同じ能登杜氏の「松の司」「萩乃露」も良いが「浪乃音」が実力を付けてきている。 
 京都府には「二日酔いしない酒」として純米造りの先駆け『玉乃光』があるが今は「純米吟醸・あらばしり生」を評価している。同じ伏見の「英勲」も「純米吟醸・やどりぎ」のような美味い酒を造れるのに定番は今イチ。また「月の桂」はにごり酒で輝いているが、黒ラベルの純米仕様のものはなかなか入手できない。今年からは大吟醸レベルのにごり酒も販売していて、自信のほどが伺われる。 
 日本海方面では『ハクレイ』が良いように思われ、中でも「香田・純米大吟醸」がお勧め。 
 次ぎに奈良県では、結構良い蔵がある。その昔「僧坊酒」として造られ、現在の酒造りの三段仕込みの原型が「多聞院日記」に書かれており、奈良県の菩提山正暦寺で造られていたのでうなずける。 
 奈良市内には「春鹿」「升平」「豊祝」などがあり、また安川酒造は中国の天津市でメチャ安の「純米吟醸」を造っている。 
 生駒市では『往馬』「山鶴」が良いが、「嬉長」も藏元直送で頑張っているが、みゅーじあむで生き残るのは難しい。吉野では能登杜氏の『八咫烏』の「大吟醸」は何度も金賞を受賞している。 
 御所市にも「百楽門」「風の森」「千代」などが良い蔵だ。また櫻井市の「談山正宗」も良いお酒を出していたし、宇陀郡の『初霞』の「純米吟醸生原酒」はいける。 
 和歌山県にいくと、「功の鷹」も良いが『黒牛』の「特別純米生原酒」がグー。「紀の鶴」も辛口で良かったが蔵を閉めてしまった。 地元大阪府にも結構良い酒蔵があるが、羽曳野市の「近つ飛鳥」は造りをやめられた。全国区では池田市の「呉春」は有名だが、今大阪では高槻市の『清鶴』に能勢の『秋鹿』、阪南市の『浪花正宗』が頑張って良い酒を造っている。 
 兵庫県では何度か蔵にお邪魔したことのある「富久錦」も独自の道をいっており、「奥播磨」もバリエーションあるお酒を醸している。北に向かうと全国発送で名をなした「小鼓」や若夫婦で頑張っているのが『竹泉』。日本海側では正しく蟹料理にあう『香住鶴』も、色々頑張って造っているのは頼もしい。 
  
中国の酒 
  
 岡山県も幻の酒米「雄町」で名をはせた「酒一筋」や「御前酒」は有名。倉敷市の『歓びの泉』が実力をつけてきている。 
 鳥取県では、残念なニュースが飛び込んできた。1995年まで広島から単身『諏訪泉』の杜氏をしておられた現代の名工・鳴川喜三さんの後を継いで社員杜氏としてようやく納得いく酒を造れるようになられた、岡賢太郎杜氏が三月に醪タンクに落ちて殉職されたという。前号でも触れたように、ハードな酒造り現場なのだ。 
「日置桜」「鷹勇」「千代むすび」も良いし、「稲田姫」も良かった。 
 島根県では「天界」「豊の秋」「扶桑鶴」も良いが、隠岐の島唯一の酒蔵「隠岐誉」の「大吟醸」もなかなかのもの。しかし、松江市の『李白』で、殆ど他県にでないが「月下独酌大吟醸生」はすごい。 
 広島県は明治以降、灘・伏見に負けない酒造りをしてきており、独立法人酒類総合研究所が移ったのも納得できる。たくさんの蔵がある中でも「賀茂鶴」は「四季醸造」(年中造りの意)の大手と間違われるくらい全国的に有名になった。 
 また、リンゴ酵母で一世を風靡した『幻』の「赤レベル」も健在だが、『雨後の月』の「真酔大吟醸」はお勧め。そのほか「千代の春」「賀茂泉」「亀齢」「宝寿」「富久長」も良いが、異色を放っているのが広島市内の『蓬莱鶴』だろう。ご夫婦で「四季醸造」されているが、全て手造りと言ってよいほど、売れて無くなりかけたら次を造るという具合。それも二人で造れる規模だから、他の蔵と比べると十分の一のスケール。 
 山口県にくると、「五橋」や「金冠黒松」は地酒では結構老舗だが、日本一の精米歩合(精米時間百四十八時間)で一升瓶を一万円に押さえている『獺祭』の「磨き二割三分・純米大吟醸」は藏元の気概が感じられる。日本酒ファンの台湾の李登輝前総統は、自らの離任式のパーティー用にこの大吟醸を指名してこられたとか。その他「東洋美人」も良いが、今若き専務自らが手がけ自分の名前の一字をラベルにして頭角を現しているのが『男山』の 「貴シリーズ」。 
  
四国の酒 
  
 四国にくると、まず香川県では、一世を風靡した「綾菊」があるが、「川鶴」も吟醸酒に力を入れてきている。ただ、その筋の人気は琴平町の『悦凱陣』で、近くに讃岐うどんで有名な「宮武」がある。 
 数年前までは但馬杜氏が醸していたが、今は藏元自らが酒を造る。本醸造タイプのお酒用に使う醸造酒も数年寝かして使うようにしていると、蔵にお邪魔した時にお聞きしたが、今は純米吟醸が人気だ。 
 愛媛県には、四国中央市に四国一ビックになった但馬杜氏山根福平さんが醸す『梅錦』があり、名杜氏水沼友一さんが四〇年以上醸し続けてた亀岡酒造は、一〇年古酒「銀河鉄道」(シャーベット状で呑む)で有名になったが、今は亡き水沼さんをホームページ上から抹殺しているのには驚かされる。そのほか「石鎚」「森の翠」や「京ひな」が良い。 
 徳島県には「瓢太閤」「鳴門鯛」が有名だが、高垣克正杜氏が醸す『芳水』「高柿木・純米無濾過生原酒」(山廃、生もと)が人気度を上げている。 
 高知県に行くと、日本海の新潟県に対抗するように辛口酒が多いが、皿鉢料理に代表されるようにインパクトのある料理との相性の関係で濃醇な辛口になる。 高知市内には『酔鯨』があり、西に行くと『亀泉』『藤娘』、東に行くと『文佳人』『南』『美丈夫』『土佐しらぎく』など県の解析・指導・助言で、ストライクゾーンのお酒を造っている。 
  
九州の酒 
  
 福岡県は茶所の八女市がある関係か『喜田屋』『繁桝』が美味い。とくに「繁桝・箱入娘大吟醸」はJAL国際線のファーストクラスで飲めるとか。博多区には地の利を生かして蔵見学やイベントスペースとして生き残りを図っている石蔵酒造がある。また三井郡の「三井の寿」「庭の鶯」三潴郡には「花の露」「池亀」「杜の蔵」などが良いように思う。 
 隣の佐賀県には、地酒ブームの初期から人気の『窓の梅』があり、『天山』も頑張って造っている。しかし、今一番お勧めは『東一』ではないだろうか。 
 長崎県のお酒はあまり県外にでないようで、焼酎の「じゃがたらお春」でも有名な『長崎美人』の「大吟醸」は、何度も全国新酒鑑評会で金賞を受賞する良いお酒だ。 
 東に行くと、大分県には東の「両関」西の『西の関』という銘酒が有るが、あとはあまり県外にでていない。やはり大分はそば焼酎が主流なんだろう。 
 次は熊本県で、吟醸酒の世界では今でも神話的存在の『香露』の「大吟醸」が有名だ。しかし、最近は余り金賞を受賞していない。酒質としては、「香露」が間借りしていたという「通潤」も良いし、「美少年」は有名だが、今熊本では『千代の園』が良いのではないだろうか。 
 地酒と言えば南限の宮崎県があるが、県の日本酒を呑んだことがない。宮崎と言えば焼酎の『百年の孤独』が人気になる前から取引があり、今でもほぼ毎月送ってもらっているので、お客さんには喜んでもらっている。 
 以上羅列的に書いてしまいましたが、私の知らないお酒もたくさんあるので、網羅できてないのはお許し願いたい。そして、あくまでも酒肴品なのであくまでもこの資料を参考にして、ご自身で飲み比べてみてください。きっと比べ呑みで日本酒を再評価されることでしょう。 
 13年続いた当館も、いつ閉館するか分からなくなりました。もし、フラッと高槻に立ち寄られた時に消えてしまっていたらご免なさい。本当に有り難う御座いました。 


編集後記

日本史上初のプロ野球の交流戦、結構盛り上がっています。あんなに負け続けている楽天を応援している楽天ファンはすごいですね。阪神ファンにちょっと似ているところがあります。
雑貨屋ニュースレターのバックナンバーは下記のURLでご覧いただけます。

http://www.zakkayanews.com/zwback.htm

Zakkaya Weekly No.469

雑貨屋 店主 大西良衛   http://www.zakkayanews.com/
              tenshu@zakkayanews.com