国果(日本を代表する果物)
“昔から日本の家には、たいてい柿の木があったのよ“そう母が言った。確かに今でも東京を離れて田舎の方に行くと其々の家に柿の木があるのを多く見かける。日本の秋の風物詩の一つにもなっていて秋のカレンダーにも柿は登場する。そして収穫した赤い柿を軒下にぶら下げて干し柿を作っている様子は何とも可愛らしく絵になる。最近、この柿が日本を代表する果物になっているという事を知った。俳人の正岡子規が詠んだ”柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺“は10月26日だった事から柿の販売促進として、その日が柿の日に選ばれたのだという事も知った。日本には、いろいろな日があるものだ。
日本の柿の歴史を調べてみたら何と縄文のその前から化石でも発見されているくらい古い歴史があるのだそうだ。日本からポルトガルそして欧米に広がっていったらしく学名もそのままKaki(カキ)が使われている。ギリシャ語ではDisopyros(ディオスピロス)Kaki(カキ)神様の食べ物とも呼ばれているくらい人々にとって熟した柿はさぞかし美味だったのだろう。
この秋に日本に帰って食べた柿は、残念ながら、さほど印象に残らなかった。特に東京のマーケットで売られている柿は青いうちに収穫してしまうからなのだろうか、、、逆にLAに戻って食べ頃まで熟した柿を木からもいで食べた方がはるかに美味しかった。
こちらLAは日本から比べると秋が少し遅い。そして一足早く春がやってくる。この11月中旬頃から街も紅葉し始め柿も熟し始める。太陽の日をサンサンと浴びて毎日少しずつ赤く熟していく柿を見るのは楽しい。
現在、私がいる、ここの家には大きな柿の木がある。50年前この家を購入した時に義理の父親が苗木をプレゼントしてくれたそうだ。それが、こんなに大きく育って毎年何百個も実が生り沢山の人を喜ばせている。何て素晴らしい贈り物を選んでくれたのだろうと思う。本当に熟した柿は滋味で美味しい。毎日食べても飽きないし、この採り立ての柿を食べていたら風邪などひかずに冬を越せる感じがする。この家の隣も前の家の庭にも柿の実がたわわに実って今がちょうど食べ頃なのだ。早く採らないと熟れすぎた柿の実がポタッと地面に落ちて庭が汚れて掃除が大変だ。先週は梯子に登って柿を採った。しかしどんなに頑張っても50年近く経った柿の木は空高く隣の塀をまたいで遠くまで枝が伸びて、とても届かない。今週はその柿を収穫するためのツールを用意してもらった。一つは長い棒の先に枝事バッサリ切り落す刃が付いていて紐をひっぱると刃が降りて柿が枝ごと採れるもの。これは棒自体が重く狙いを定めて枝を切るのが難しい。もう一つの方は棒の先に熊手型のバスケットが付いているもの。一つ一つ採るので時間がかかるけれど、慣れてくると早いペースで採れる。やりだしたら面白くなって夢中で100個ぐらい収穫した。途中、熟れた柿がべチャッと落ちてきて何度か直撃されたけれど美味しいものを食べるための努力は惜しまない。“もう、その辺でいいわよ。危ないから降りてきて。もう、後は鳥の餌にしたらいいわよ“と言うハウスオーナーの言葉に”あと、もう少し、もうちょっと、あのあたりの赤いのを“と言いながら欲張ってたくさんの柿を収穫した。収穫した柿は洗って皮を剥き平たく切り5段になっているトレイに並べ乾燥機に入れ2日ほど低温で乾かす。そうすると美味しい干し柿が出来長持する。
冬の保存食として干し柿にする事も昔からの知恵だったのだな〜と。そんな柿の栄養価を改めて調べてみるとビタミンCはもとより、ビタミンA,K,B1,B2,カロチン、リコピンなど抗酸化パワーも強くそしてタンニン系が入っているポリフェノールは二日酔い防止にもいいそうだ。年末のホリデーシーズンに抗酸化パワーに溢れている柿をお伴にお酒を楽しむのも良さそうだ。お酒のおつまみとして春菊と柿の白和えのレシピを見て作りたくなってしまった。干し柿にクリームチーズも合いそうだ。今後、国果としての柿を見直してみるチャンスになりそうだ。
茶子 スパイス研究家 |