龍翁余話(572)「新時代『令和』を寿ぐ」
まずは第126代天皇陛下のご即位、新時代『令和』の幕開けを寿(ことほ)ぎたい。とにかく平成31年4月30日から令和元年5月1日への代替わりに、多くの人がテレビにくぎ付けになったことだろう。翁もその1人――厳粛・感謝・感激・慶賀の雰囲気が交錯した歴史的な2日間であった。
第125代天皇陛下は4月30日午後5時、皇居・宮殿「松の間」で「退位礼正殿の儀」に臨まれた。“生前退位”による代替わりは、江戸時代の光格天皇以来、202年ぶりだそうだ。退位の礼には美智子皇后さま(上皇后陛下)が陪席されたほか、新天皇になられる皇太子と新皇后になられる雅子妃殿下、秋篠宮ご夫妻をはじめ女性を含む成年皇族方がご参列。安倍首相と閣僚のほか衆参両院の正副議長、都道府県知事の代表と配偶者ら約290人が出席。式典では、歴代天皇に伝わる三種の神器のうち「天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)の複製品と「八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)」、公務で使われる天皇の印「御璽(ぎょじ)」、国の印章「国璽(こくじ)」を、側近が「案(あん)」と呼ばれる台の上に安置。実に厳かな儀式だ。
安倍首相が国民を代表して謝意を述べた「自然災害などで困難に直面した際、常に国民に寄り添われてきた天皇陛下(上皇陛下)に明日への勇気と希望を与えていただきました」。確かに“国民に寄り添う”お姿は天皇陛下(上皇陛下)と皇后陛下(上皇后陛下)によって体現された、と(翁だけでなく)多くの国民がそう印象付けられたに違いない。安倍首相の“感謝の言葉”のあと天皇陛下(上皇陛下)は【今日(こんにち)をもち,天皇としての務めを終えることになりました】と“退位“を表明され、更に【象徴としての私を受け入れ支えてくれた国民に、心から感謝します】と謝意を示されたうえで【明日(あす)から始まる新しい令和の時代が、平和で実り多くあることを、皇后と共に心から願い、ここに我が国と世界の人々の安寧と幸せを祈ります】と締めくくられた。天皇としての最後のお姿を拝顔し、お言葉を拝聴しながら翁、万感胸に迫り来るものあり、幾度頬を濡らしたことか――
剣と勾玉(まがたま=先史・古代から伝わる装身具の1つ)などは5月1日午前0時をもって皇太子さまに引き継がれた。同時に皇太子さまは第126代天皇に即位され、雅子さまは皇后に、そして第125代天皇は上皇陛下に、美智子皇后は上皇后陛下になられた。なお、秋篠宮さまは皇位継承順位1位の皇嗣(こうし)として皇太子の役割を担われる。長男の悠仁さまは継承順位2位となられた。30年余り続いた『平成』は4月30日をもって幕を閉じ、元号は『令和』に替わる。新天皇陛下は5月1日、(前日の)退位の儀式と同じ皇居・宮殿「松の間」で皇位継承に伴う国事行為「剣璽等承継(けんじとうしょうけい)の儀」と「即位後朝見(ちょうけん)の儀」に臨まれた。陛下は、中央の壇上に最高位の勲章“大勲位菊花章頸飾(けいしょく)”を首から下げてお立ちになり、ティアラ(宝冠)とネックレスを輝かせた雅子皇后陛下が寄り添われた。皇嗣・秋篠宮さまと常陸宮さまは勲章付きのえんび服という正装のお姿。秋篠宮妃紀子さまをはじめ女性の成年皇族10方が勲章、ティアラを着用したロングドレスという装束で、華美な雰囲気に花を添えられた。
新天皇陛下が「即位後朝見の儀」で述べられたお言葉は次の通り――【日本国憲法および皇室典範特例法の定めるところにより、ここに皇位を継承しました。この身に負った重責を思うと粛然たる思いがします。顧みれば、上皇陛下にはご即位より30年以上の長きにわたり、世界の平和と国民の幸せを願われ、いかなる時も国民と苦楽を共にされながら、その強い御(み)心をご自身のお姿でお示しになりつつ、一つ一つのお務めに真摯に取り組んでこられました。上皇陛下がお示しになった象徴としてのお姿に心からの敬意と感謝を申し上げます。ここに、皇位を継承するに当たり、上皇陛下のこれまでの歩みに深く思いを致し、また、歴代の天皇のなさりようを心にとどめ、自己の研鑽(けんさん)に励むとともに、常に国民を思い、国民に寄り添いながら、憲法にのっとり日本国および日本国民統合の象徴としての責務を果たすことを誓い、国民の幸せと国の一層の発展、そして世界の平和を切に希望いたします】――
ご即位後、天皇陛下が公式行事で国民の前にお姿をお見せする初めての機会が5月4日の「一般参賀」だ。新天皇・皇后両陛下を中央に、皇嗣・秋篠宮さま、皇嗣妃・紀子さま、長女・眞子さま、次女・佳子さまほか成人皇族の方々が宮殿・長和殿のベランダにお立ちになりマイクを通じて【このたび「剣璽等承継(けんじとうしょうけい)の儀」、および「即位後朝見の儀」を終えて、今日、このように皆さんからお祝いいただくことを嬉しく思い、深く感謝いたします。ここに皆さんの健康と幸せを祈るとともに、わが国が諸外国と手を携えて世界の平和を求めつつ、一層の発展を遂げることを心から願っております】とのお言葉を述べられた。この「一般参賀」は午前10時以降、計6回行なわれた。「一般参賀」に集まった人たちは計14万1130人(宮内庁発表)だったそうだ。
日本の国柄の最大の特徴は、天皇と国民が共に歩み長い歴史を紡いできた点にある。天皇が代を重ねられることは国家の安泰を意味し、慶賀の至りである。しかし、天皇のご公務は時代と共に増え続けている。天皇は「一般参賀」で国民の健康と幸せを祈られたが、翁はむしろ(ご公務繁多故の)天皇・皇后両陛下のご健康を懸念する。“健康”と言えば上皇・上皇后両陛下にも(これからも)長くお元気でいていただきたいし、時々は我々国民にお元気なお姿をお見せいただきたい。ともあれ、新緑が眩しい季節の訪れとともに『令和』の時代は確実に動き出した。我々国民は『新時代を寿ぐ』と共に皇室の弥栄(いやさか)を祈り、上皇陛下、天皇陛下の御心に沿うべく日本国と世界の平和・繁栄のために何を為すべきかを考え、努めなければならない・・・っと、そこで結ぶか『龍翁余話』。 |