龍翁余話(507)「千駄ヶ谷漫歩」
正月の間、食っちゃ寝、食っちゃ寝したせいで、体重が2kgも増えた。こりゃ大変だ、散歩するなど体を動かして体重を減らさなければと思い、いつもの戸越公園や、JRの五反田駅から大崎駅にかけての目黒川沿いの散歩を(七草までの間に)1回ずつ行なった。実は、目黒川散歩の時は大崎駅ビルの中にあるピザハウスでランチタイムに翁の大好物の“チーズいっぱいのピザ”を食べるのが楽しみ。また日曜日は(『龍翁余話』配信の後)、見たいテレビ番組が目白押し。ソファーに横たわってクッキーやら煎餅などイヤし食いしながら将棋・囲碁・落語のほか、何年か前のドラマの再放送・古い映画(時代劇や西部劇)などを視て過ごすのが定番。こんなことだから体重が減る訳はない。もっと散歩の回数を増やさなければ、と気はせくのだが、この寒さでは・・・
先日の金曜日、会社に顔を出し、役員たちとランチした後、帰宅するにはまだ早いし天気はいいし、ならばどこか散歩して帰ろうかという気になってフト思い出したのが千駄ヶ谷。
我が社は代々木にあり、千駄ヶ谷までゆっくり歩いて25分ていど、ちょうどいい距離だ。
千駄ヶ谷と言えば『東京体育館』、『鳩森八幡神社』、『能楽堂』、『将棋会館』がある。昨年の将棋界は藤井少年(4段)の活躍、長老・加藤一二三9段の引退と芸能界入り。羽生永世竜王・永世7冠誕生など(今まで翁の記憶にないほどの)フィーバーぶりだった。“よ〜し、今日の散歩の目玉は『将棋会館』にしよう”と思いながらJR総武線に沿って千駄ヶ谷駅方面へ歩いた。何十年ぶりかの千駄ヶ谷である。
駅前の『東京体育館』の威容が目に飛び込んで来た。“あれ?こんなにデカかったかな?
『東京体育館』は大規模な競技大会が出来る国内でも中枢的な存在。メインアリーナは最大1万人収容。卓球・レスリング・バレーボール・フィギュアスケートのほか、一般利用者のためのプール・トレーニングルームなどが日常的に開放されている。2020年の東京五輪では卓球会場として使われるそうだ。
その『東京体育館』の先に『鳩森八幡神社』がある。初めて参詣する。由緒によると創建は神亀年間(724年〜729年)、御祭神は第15代天皇・応神天皇(八幡様、武神)と“聖母(しょうも)”と呼ばれた神功皇后(応神天皇の母、第14代天皇・仲哀天皇の皇后)。
拝殿参拝の後、境内を散策。まず、東京都指定有形民俗文化財”冨士塚“(写真左)、寛政元年(1789年)の築造、円墳形に土を盛り上げ頂上に至る登山道の石段は自然岩を使用、登り口に浅間社、途中、身祿様(宗教家=富士信仰の中興の祖)の洞窟、烏帽子岩、釈迦の割れ石などが置かれている。せっかくだから翁も登ってみた。1歩1歩ごとに何となく我が身が浄められているようで心地よかった。その”冨士塚“の直ぐ隣に”能楽堂“がある。立派だ(写真中)。毎年5月初旬に“薪能”が開催されるとのこと。神社の近くに『国立能楽堂』があるが、今日はパスして目的の『将棋会館』へ急ぐことにするが、その前に神社境内でもう1つ興味深い建物を見つけた。社殿の北側に建つ六角形の『将棋堂』(写真右)。堂の中にはお隣の『将棋会館』(日本将棋連盟)から奉納された1.2mの王将大駒が納められている。将棋の駒は五角なのに何故“六角堂”なのだろう?六角形は天地と東西南北を合わせて6つになるのだが、そんな宇宙論的な話より昔から言い伝えられる“亀甲論”のほうが(翁には)解り易い。つまり“六角形”とは亀甲に由来する。“鶴は千年、亀は万年”と言われることから健康や長生きを意味する縁起のいい形が“六角形”だ、と、翁は勝手に決めつけている。とは言え“将棋堂”の“六角形”の本当の意味は何だろうか?気にしながらお隣の『将棋会館』へ。
2階の将棋教室を覗いたら中年・老年の男女60人あまりが対局していた。ウイークデーの3時ごろだったので少年少女棋士たちの姿はなかった。“撮影禁止”だったので、1階の売店で売られている有名棋士たちの揮毫扇子を撮った。上段右から「生涯現役」(加藤一二三・九段)、「玲瓏(れいろう」(玉のような美しさ)(羽生善治・竜王・棋聖)、「調和」(大山康晴・名人)、下段右から「来者可追(らいしゃおうべし)」(未来のことより今をどうするか考える)(行方尚史・八段)、「堅忍不抜(けんにんふばつ)」(何事も心を動かさず耐え忍ぶ)(深津康市・九段)、「一陽来復(いちようらいふく)」(悪いことの後には善いことが来る)(屋敷伸之・九段)――今日の『千駄ヶ谷漫歩』は体重減らし効果のほかにプロ棋士たちから“精神滋養”をいただいた散歩であった・・・っと、そこで結ぶか『龍翁余話』。 |