東京都の舛添知事がついに辞任に追い込まれました。都議会では自民、公明を含むすべての主要会派から舛添氏は不信任されることになり、辞任せざるを得なくなったようです。
舛添知事の辞任は表向きには、政治資金流用や公用車利用など一連の公私混同が、都民の感覚と大きくかけ離れていたからといわれます。
彼は外国訪問時に航空機のファースト・クラスやホテルのスイート・ルーム宿泊料金を公費で賄い、それは大都市のトップとして当然であり、また、多少の公私混同くらいは許されるとの認識で、都民を甘く見、強気で通せば法的にもまかり通ると思っていたふしがありました。
しかも都知事の不信任は都議会の4分の3以上の賛成が必要であり(その他、都民によるリコール、百条委員会などありますが)先の都知事選挙で都民から圧倒的に支持をされて当選した自分が“こんなことで”不信任されるとは当初、夢にも思っていなかったのでしょう。でも、都議会にきちんとした基盤もなしに出た強気が裏目に出、脇の甘さをさらけ出してしまったようです。
今回露呈した、これらの疑惑に対し、彼は法的な問題としてとらえ、自ら選任した弁護士まで動員して違法性がない旨、主張しようとしていましたが、これは法に触れるかどうかより、一般的な常識が問われることであった筈です。もちろん法に抵触することは論外ですが。都民の大多数が「そんな言い訳が常識として通用するとでも思っているのだろうか」と感じたのではないでしょうか。
政治資金規正法という法律が政治腐敗の防止を目的に制定されていますが、政治活動の自由を尊重するために使途を制限する規定が甘く、この法律では刑事責任を問うことが難しいのだそうです。そういう意味では、先ずはこの法律を世間一般の常識にあわせたものにすべきではないでしょうか。
今から30年ほど前、私がアメリカへ赴任した当時、まだ東大の新進気鋭の国際政治学者として著書や論文を発表していた舛添要一という人物に私は惚れ込み、彼の著作を集めたことを覚えています。その後、政治の世界に身を投じた彼を陽に陰に支持し応援していた私でしたが、今回、彼の言動には正直落胆しました。
今、アメリカのメディアでは「sekoi(セコイ)」という日本語の単語まで登場し、彼の知事としての器が評されています。
ここへ来て、世間の関心は次の都知事選挙に移っています。選挙は7月中に公示が予定されるようですが、どんな人物が次の都知事になるのでしょうか。私たち海外在住邦人には日本の国政選挙権はあっても、都知事のような住民投票には参加できないので、有権者としての参加は不可能ですが、だれが次の都知事になるかは無関心ではいられません。
東京は世界に冠たる大都市であり、東京の動向は世界から注目されています。特に2020年のオリンピック・パラリンピックに向けてその準備をどのように進めるのか気になるところです。8月のリオ五輪・パラリンピックで行われる「五輪旗引き継ぎ式」に出席するだけでなく、いよいよ世界に向けた「東京オリンピック・パラリンピックの顔」となる自治体のトップになるのです。
日本からのニュースによると、金銭にかかわる不祥事が続いた辞任劇を受け、新知事の資質としてクリーンで知名度の高い人物を物色しているとのことのようですが、清潔だけで何もできないようでは最悪です。
今回のようなスキャンダルのあとの選挙ですから、クリーンで知名度はもちろん必要ですが、政治家として超大都市である東京都の知事としての資質を備えていなければ意味がありません。政治とはある意味“清濁あわせのむ”大器でなくてはならないので、芸能タレントの人気投票のような結果にならないよう願わずにはいられません。
「オマエの国の首都(東京)のガバナー(知事)はセコイし、すぐ変わるネ」、「オマエの国の民主主義はどうなっているノダ」などと海外から評価されない資質の人物を選出しましょう。
次の都知事は東京都民の一票によって決定されます。有権者の民度が問われることになります。都民の皆さんの責任ある投票行動を見守りたいと思います。
河合 将介( skawai@earthlink.net ) |