ヘチマのたわしと台湾料理
先週末、久しぶりに台湾の友人から夕食のご招待を受けた。会社のITを担っている彼女は、いつも仕事や勉強そしてチャーチのボランティアに追われていて、なかなかゆっくり会えない。来週は休みをとって家族のいる台湾に帰ると言う。その前に食事でもしながら、お喋りしましょうという事になって私もちょうど彼女にあげたかったヘルスエキスポのサンプルとギフト商品があったので仕事帰りに寄った。そこで見つけたのがキッチンにあったヘチマのたわし。最近では、あまり見かけなくなってしまったけれど何だかとても懐かしくなった。昔、祖母の家のお風呂場にあったのを思い出した。そのヘチマで鍋を洗ってみたら、とても使いやすかった。
どこで購入したのか聞くと台湾だという。彼女は、すぐにキッチンの棚からヘチマのたわしを取りだして私にくれた。今まで誰の目にもとまる事がなかったけれど貴方が初めて、このヘチマのたわしに興味を持ってくれたと喜んでくれた。ヘチマと言えば母の鏡台に昔、緑色のヘチマのローションがあった事も思い出した。ヘチマを漢字で書くと
糸瓜と書く。漢字だけ見るとイトウリと読んでしまいそうだ。胡瓜(きゅうり)も同じウリ科なので似たような花が咲く。大きさは胡瓜よりだいぶ大きいけれど形も似ている。効能も似ていて肌にも良さそうだ。調べてみるとヘチマは食用として台湾では小龍包の具にも使われているらしい。成熟する前の柔らかい実を料理にも使うようだ。食べても、化粧水にしてもいいし、果実の繊維で鍋を洗ってもいいし、何て便利でエコな植物なのだろうと妙に感動してしまった。いつも彼女の所で食事をする時は2人でキッチンに立って其々の国の家庭料理を作る。私はちょうど余った茄子を3本頂いてきたので油でソテーして生姜を刻み甘酢ドレッシングをかけた。お豆腐があると言うので片栗粉をまぶして高温の油で焼き色をつけて柚子味噌をかけた。彼女は、平べったいフリルのような麺を茹でてその脇に赤いパプリカを切り添えて黒豆とハトムギを煮たものを出してくれた。豆はモチモチしていてハトムギだけよりは食べやすい。麺は、きし麺のような感じ。赤いパプリカは切っただけ。いつも殆ど味無しのプレーンなものだ。“これは、このまま食べるの?”と聞くと、このビネガーを使うの“と彼女のお気に入りの調味料をテーブルに置いた。字を見ると鳥に酢という字が書いてあった。会社名なのか商品名なのか”このバードビネガーは、どんな意味なの?“と聞くと、鳥という字では無く黒いという漢字なのだそうだ。鳥の漢字に似ているけれど良く見ると真ん中の横線が1本無い。
その黒い色をしたビネガーは特にシーフードにかけると美味しいらしい。成分はもち米とスパイスと書いてあった。試してみたら、お酢のツンとくる酸っぱさが無いマイルドな味のビネガーで何にでも合いそうな味だった。このビネガーをスチームしたクラムにかけると美味しいらしい。麺はワサビ醤油をかけたアボガドと一緒に食べるのだそうだ。前回、ワサビ醤油とアボガドの組み合わせを教えたら気にいってくれて、それからはいつもそうやって食べているそうだ。私はそのフリルのような麺に自分が持参した七味唐辛子のブレンドソルトをかけて食べた。味がプレーンすぎる場合は、このブレンドソルトがあれば大抵のものは食べられる。見るとお皿の横に並べられた納豆が浮いている。“貴方の料理と組み合わせは、いつもユニークね”と言ったらゲラゲラ笑って“そうなの、私は料理が下手だけれど栄養バランスは考えているのよ”と言った。日本料理が好きな彼女に今回、初めて柚子味噌を試してもらったらとても気にいってくれた。残った柚子味噌を彼女の容器に移したら今度は彼女のお気に入りのビネガーをその瓶に入れてくれた。また、一つ調味料が増えた。
ビネガー一つとっても奥深いものがある。其々の国が育んできた食の歴史や文化は面白い。
茶子 スパイス研究家 |