神嘗祭 初日
日本に戻ってくると時間がある限り食に関したイベントやセミナーに出かける事にしている。その中で “食と信仰のかかわりー東西世界でのさまざまなかたち” という面白そうなセミナーがある事を知った。主催は味の素食の文化センター。ここのセンターは食に関する本やビデオが揃っていて誰でも利用出来る。食に関してかなりの蔵書があって何か調べ物をする時にはここに来ると大抵の事は調べられる。2階は食文化の展示室があって戦前から戦後の今にいたるまで日本の台所がどのように変わっていったか展示されていて、なかなか充実している。いつもは、この食に関したセミナーが東京のセンター内にある講堂で開かれるのだが今回は何と伊勢シティホテルで開催される事になっていた。三重県と言われても行った事もなく足を運ぶには遠いな〜と思っていたが伊勢神宮にも行った事が無かったのでこの際、日本人ならば1度は伊勢神宮にも訪れてみるのもいいだろうと一泊2日で出かける事にした。昨年はこの伊勢神宮、20年に1度行われる式年遷宮の年だったらしく東京都の人口全部を合わせた人数の人が各地から集まって伊勢神宮を参拝したらしい。私の友人もその一人で、とても良かったと聞いていたので機会があれば行ってみようと思っていたのだ。10月15日、伊勢市に到着して午後のセミナーの前にまずは外宮を参拝してみようと歩いていると何やら御神輿を担ぐ声が聞こえてきた。地元の人に聞くと今日と明日は神嘗祭といって伊勢神宮にとってはお正月のような大きなイベントなのだそうで秋の収穫際に神様にささげる初物を奉納して祝う時なのだそうだ。そういう日にちょうど“食と信仰のかかわり”についてのセミナーがこの伊勢で行われるというのも絶妙のタイミングだったと思う。
伊勢市駅から外宮に通じるまっすぐ伸びた通りにも縁日のようにたくさんの出店が出ていて伊勢市は平日にも関わらず賑やかな活気があった。普段、神道も含め宗教儀式に接する機会が無い私は失礼にならないようにお伊勢まいりの参拝マナーが書いてある本をサラサラ事前に目を通しておいた。お手水の作法、礼拝の作法、服装、どこからどうやって回るか、などなど…ところが見ていると鳥居の真ん中を歩いたり2拍手を3回したり2拝を1拝している人もいたりで4つ目5つ目と鳥居をくぐるうちに私も途中から何だかわからなくなってきてしまった。それでも形式よりは真心が大切だから多少おじぎの回数を間違っても神様は多めに見てくれるだろうと自分勝手な解釈をしながら外宮を回って遷宮記念会館にも訪れてみた。そこで館内のスタッフの方が伊勢神宮の歴史と伝統文化、建築技術の話をしてくださった。昨年LAから来た米国の建築家の人はその建築物の前で2時間も立ち尽くして熱心に観察し感心しておられたそうだ。私達が気に留めていなかった日本の素晴らしさを最近は外国の人の賞賛によって改めて気がつかされる事も多い。戦後、日本人の教育政策にも関わったGHQが行った様々な政策はこの伊勢神宮にも影響を及ぼしたようだ。それでも何千年も続いてきた伝統の灯は消される事なく粛々と伝えられてきた。その2000年という長い時間を考えると日本という国は一言で言い表せないくらい不思議な国だな〜と感慨深く自分の世界にひたっているうちにあっという間にセミナーの時間になっていたので慌てて”食と信仰のかかわり”の開場セミナーに向かった。
茶子 スパイス研究家 |