龍翁余話(336)「品川区の“はつらつ健康チェック”」
6月に『はつらつ健康チェック』というアンケート調査表が品川区(高齢者福祉課)から届いた。「あれ?こんな調査、今までにあったかな?」翁には、記憶がない。そこで品川区に問い合わせたら、平成24年度から開始、今年で3回目だそうだ。翁は、過去2回、多分、ゴミ箱へ直行させたのだろう、申し訳ないことをした。区の挨拶分に「この調査は(高齢者の)運動機能や生活力などの心身機能の低下の有無を判断することを目的とするものです」とある。“介護が必要にならないように、自分の現状を確認しよう”と思って、意気込んでこの調査に応じることにした。
設問は「暮らし」「運動」「栄養」「歯と口」「外出」「物忘れ」「こころ」「その他」の8つのカテゴリーに分類されており、質問は33項目。答えは「はい、いいえ」の2つだけ。この2つだけ、というのが問題だ。翁は、ある質問のところで回答に迷って(と言うより、腹が立って)結局は(その質問を)“無回答”にしたら、後日、区の高齢者福祉課から電話があり「何故、無回答ですか」と問われた。そのことは後で詳しく述べることにして、まずは皆さんにも『はつらつ健康チェック』に挑戦していただこう。(質問によっては)果たして「はい、いいえ」だけの単純回答で済まされるかどうか・・・
「バスや電車で、1人で外出していますか」(はい、いいえ)、「日用品の買い物を(1人で)していますか」(はい、いいえ)、「預貯金の出し入れを(1人で)していますか」(はい、いいえ)、「友人の家を訪ねていますか」(はい、いいえ)、「家族や友人の相談にのっていますか」(はい、いいえ)
「階段を、手すりや壁をつたわらずに登っていますか」――これは実に乱暴な質問だ。状況によって回答が変わる。たとえば、自宅の階段は勿論、JR駅や地下鉄などの急傾斜の(あるいは長い)階段の場合と、上りより下りの方が危険を感じる階段の場合、手すりや壁の必要度が異なるので単純に(はい、いいえ)で答えられるものではない――「椅子に座った状態から、何もつかまらずに立ち上がっていますか」(はい、いいえ)、「15分くらい、続けて歩いていますか」――これも、毎日の散歩をイメージしているのか、“歩く時は15分くらい”を訊いているのか不明瞭だ――「この1年間に転んだことがありますか」(はい、いいえ)、「転倒に対する不安はありますか」(はい、いいえ)。
「6か月で2〜3kg以上の体重減少がありますか」――『健康チェック』なら、“減少”だけでなく“増減”の両方を訊ねるべきであろう――「半年前に比べて固いものが食べにくくなりましたか」(はい、いいえ)、「お茶や汁物などでむせることがありますか」(はい、いいえ)、「口の渇きが気になりますか」――この問いは重要だが、その問いの後に「口の渇きが気になった時、直ぐに水分を補給していますか(あるいは「頻繁に水分を補給していますか」)の問いが(医学的には)絶対に必要であるはずなのに何故、設問しなかったのか?『健康チェック』らしからぬ“質問落ち”だろう――「週に1回以上、外出していますか」(はい、いいえ)、「昨年と比べて外出の回数が減っていますか」(はい、いいえ)。
「周りの人から“いつも同じことを言う”などの物忘れがあると言われますか」(はい、いいえ)、「今日は何月何日か分からない時がありますか」(はい、いいえ)、「自分で電話番号を調べて電話をかけることをしますか」(はい、いいえ)――この質問は(今では)前時代的で陳腐この上なし。現在は(超高齢者はともかく)80代までの高齢者でも携帯電話を持っている人が多い。高齢者の年齢別携帯電話所有率(利用率)を調べたら、60代は86%、70代は73%、80代でも56%(シニアマーケティング社調査)となっている。そして電話番号は全てインプットされている。あまり意味をなさない質問だ――
以下は“こころ”に関係する項目の設問である。@「毎日の生活に充実感がない」、A「これまで楽しんでやれていたことが楽しめなくなった」、B「以前は楽に出来ていたことが、今では億劫になってきた」――AとBは同質・重複質問ではないか?――そして次の質問C「(ここ2週間で)自分が役に立つ人間だとは思えない」――この無礼な質問に対して、翁はかなり立腹、“無回答”にした。そして前述の担当者(区の高齢者福祉課)からの電話「何故“無回答”ですか?」に翁は激怒した。「質問の国語的意味は理解するが、質問の目的(ねらい)が理解出来ない。君たちは何の意図があって高齢者に対し、このような失礼な、弱者心理をえぐるような、上から目線の愚問を呈したのか、理由を言いなさい」と(高飛車に)詰問したところ、相手は突然、電話を切った。翁の口癖が飛ぶ「この無礼者!」――相手不在の受話器に向かって怒鳴っても空しいだけだったが・・・さてさて、皆さんの(以上の質問に対する)お答えは、いかが?・・・
“文句たれの龍翁”と言われる翁だが、翁なりに“是々非々の精神”は心得ているつもり。したがって品川区が多角的に展開している子ども・高齢者の福祉活動について、かなり評価している部分もある。例えば“見守り活動”として(孤独死防止を目的とした)民生委員による定期的な“独り暮らし高齢者宅訪問”、小学生の登下校の8時と3時に子どもたちの安全を守る“ハチサン運動”など区民参加の助け合いシステムは目に見える福祉行政の一環であろう。ただ、目線や方法論が(時として)“区民サイド”でなく“行政側”に立ち過ぎるきらいがある時は、翁は吼える。品川区の2013年度の推計によると、65歳以上の高齢者人口73,700人は、総人口355,400人の20.7%、翁も、その中の1人だ。翁は思う“守って貰う”だけの老人ではなく、それこそ“ほんの少しでもいいから(誰かの)役に立つ人間であり続けたい”――ならば、やはりこの『はつらつ健康チェック』と(同じく区の)『後期高齢者健康診査』は毎年受けなければ・・・っと、そこで結ぶか『龍翁余話』。 |