尾瀬のハイキング
“夏が来れば思い出す 遥かな尾瀬 遠い空 霧の中に浮かびくる やさしい影 野の小道
水芭蕉の花が咲いている 夢見て咲いている水のほとり しゃくなげ色にたそがれる
遥かな尾瀬 遠い空 “ |
断片的に思い出すこの懐かしい童謡。そうだ今頃がちょうど水芭蕉のシーズンなのだな〜と友人と尾瀬の話をしていたらお互いに1度も尾瀬に言った事が無いのがわかった。調べてみると新宿から朝初で尾瀬の日帰りバスがあるという。6月の中旬は雨季のシーズン真っ盛り。雨の尾瀬も風情があっていいかも…雨に降られても構わないから行こうと出発3日前にバスの予約を入れて尾瀬に出かけることにした。写真やTVで見た尾瀬は広々とした湿原地帯の中にどこまでも続く平たんな木道の道があり誰でも簡単にハイキングが出来そうなイメージがあった。トレイルによっては車椅子ごと入れる広い木
道もあると聞いていたので、とりあえず私たちは何も考えず鳩山峠から歩くコースのバスに乗り込んだ。初心者でも大丈夫とパンフレットに書いてあったので私は、お散歩用の底がツルツルの白いウオキングシューズで出かけた。ジャケットやズボンは山用でも登山靴はLAに置きっぱなしで持ってきていなかった。山の経験があまり無い友人は初めて登山靴が履けると喜んでいた。見ると本格的なハイカットの防水加工がしてある立派な登山用の靴だ。ところが方手にはおしゃれな黒のハンドバック、片手には重い厚手棉のパーカーを携えていた。周りを見るとポールを持っている人が目立つ。バックパック
も大きく本格的な登山スタイルの人が多い。何だか友人も私も、ちぐはぐな服装だった。鳩山峠の出発地点から山の鼻、山小屋に至る木道は標高が1,591メートル。だらだら長い下り坂が3,3km 約60分その道は続く。下り坂の両脇は緑に囲われて木陰になっていて涼しくて気持ちがいい。途中、川のせせらぎに交じってカッコーとウグイスの鳴き声が交互に聞こえリラックスモードになる。下り坂が終り平坦な道になるとその先に休憩所と山小屋が見えてきた。そしてその向こうに山々が連なってやっと広々とした尾瀬の湿原地帯が現れた。ここが最初の休憩地点、そこで私たちはランチをとってゆっくり
湿原地帯の花を観賞する事にした。白い水芭蕉も印象的だけれど様々な色の可憐な花が咲いてそれらを見て歩くのも楽しい。ランチをとっているとビールケースや食料が入ったケースを身の丈ほどにしょって山小屋へ向かう若者が目の前を通り過ぎて行った。その中の一人と話してみたらアフリカやキューバーを旅して帰ってきたばかりだそうだ。楽しかったけれどお金が無くなったからまたこうしてお金を稼いで溜まったらまた外国の山歩きに出かけるのだと嬉しそうに話していた。
学校を卒業してすぐに社会人として会社人生を過ごすのも一つの人生だけれど自分の満足する生き
方を誰からも干渉されること無く人の目を気にしないでやってしまう行動力もいいなと思う。1度、会社の組織の中に入ってしまうとなかなか自由きままな旅は出来ない。今出来る環境にいるのなら今のうちにたくさんの経験を積んでおく事もいいのだろうと思う。寄り道はただの寄り道でなくいろんな発見や宝物を拾えるチャンスもある。少し前に今の若者は内向きで外に出たがらないという話を聞いたことがあるけれど、そうでもないように思える。以前ほど米国に行きたいと思う若者は多くなくなったかもしれないけれど米国以外の海外に出ていく若者は案外多いような気がする。
帰りと同じ坂道を登っていると後ろで誰かが”初心者向きと書いてあったけれど、何だか騙された〜”とぼやいていた。確かに登りは日頃運動不足の人にはきついかもしれない。
翌々日、筋肉痛になったと友人からメールが入った。運動不足の割には全く筋肉痛が無かった私は少しだけ私の方が友人よりも若いかも、などと一人、にんまりしてしまった。
茶子 スパイス研究家 |