筍
昨年の春に食べた筍の天ぷらがあまりにも美味しくて今年もこの春の恵みの筍を食べたいと思っていた。先週、たまたま武蔵野の面影が今も残る芦花公園に出かけた時にタケノコ堀をしていた人に出会った。それも住宅地の一角に竹藪を残してある家の敷地の中での事だ。地表から少しだけ出ている筍を丁寧に周りからスコップを入れて掘っているのを見て“ 大変そうですね “ と声をかけた。すると” 最近の若いもんは、こんな筍堀は誰もやりたくないから私が毎年、この家に手伝いに来ているんだよ ”と笑って言った。特に、この時期は油断するとあっという間に筍が成長してしまうらしい。雨後の竹の子とは良くいったもので雨が降った後は特に筍の成長が著しいそうだ。何だか珍しくてその筍が掘り出されるまでじっとその様子を見ていた。筍は掘る時間帯があって日の当たらない早朝のうちに掘るのがいいそうだ。そして採れた筍はその日のうちに料理して食べるのが一番美味しいのだそうだ。ふと見
るとその大きな敷地の庭先では採れたてのお野菜が売られていた。今まで掘りたての筍などは食べた記憶が無かったので今年は、その堀たての竹の子を食べてみることにした。他にも菜の花や他のお野菜があったらしいが、すでに完売だった。とりあえずどんなものか筍を2本だけ購入してみた。その日のうちに食べなくてはと早速家に戻ってから下ごしらえだけでもと思い調理にとりかかった。たった2本の筍なのに皮を剥いだらたちまち袋一杯に筍の皮がとれた。 知人の子供が初めて筍を見た時 “ これ狸の皮?” と聞いたらしいが外側は毛羽立っていて丈夫そうだ。何だかその皮を捨ててしまうのはもったいないし何か利用価値が無いのだろうかと調べてみたら昔は筍の皮を利用してタケノコ草履を作ったりしたそうだ。また防腐効果の高い筍の皮でおにぎりを包んだりして利用されていたそうだ。なるほどと感心しながら次回チャレンジしてみようと思った。
さて、この旬の筍の薬効を調べてみるとカリウム、物繊維、チロシン ビタミンB2 カルシウムがあって体にも良さそうだ。チロシンという物質は神経の伝達に関わる物質を作ったり代謝をコントロールする甲状腺ホルモンの原料にもなるそうだ。旬のものは冬に溜まった毒を取るとも言われている。食べ物はやっぱり薬なのだな〜と改めて思う。
そういえば筍について調べていたら筍医者という言葉を見つけた。
「藪医者」(やぶいしゃ)というのは診断や治療の能力が劣った医者の事をいい「筍医者」(たけのこいしゃ)というのは、これからヤブになっていく医者だそうで思わず笑ってしまった。
何でもこの言葉は古典落語の桂枝雀師匠の「夏の医者」で出てくるらしい。
茶子 スパイス研究家 |