前回、人間の脳が左脳と右脳に分かれていて、左脳は論理・理性・言葉などの機能を担当し、右脳は感情・直感・パターン認識など、感性の部分を担当するということを書き、さらに私たち日本人の場合は、欧米語を母国語とする西洋人と異なり、本来理性を司る左脳で一部感性的認知もしているという学説を唱える角田忠信氏(東京医科歯科大学教授)の話をご紹介しました。
この「角田理論」は日本人のいわゆる 「あいまい(ファジー)思考」
について考える時、大きなヒントの一つになるのではと思われます。そこで今回ももう一度取り上げることにしました。
このテーマについて、わかり易く解説している文章を見付けましたので以下しばらく引用します。(引用元:「JAPAN AS
IS−日本タテヨコ−和英対訳版P.42」 by Gakken Co., Ltd.)
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〔日本人の脳〕:日本の音楽会は、どこへ行ってもたいへん静かだ。聴衆は皆文字どおり息を殺して演奏を聴いている。外国の指揮者などは、日本人はマナーがよいと褒めるが、実はこれは日本人の脳のしくみに原因があることが、東京医科歯科大学の角田忠信教授の研究でわかっている。
欧米型と日本型
人間の脳は左脳(言語脳)と右脳(音楽脳)に分かれ、その機能が異なる。左脳は言語や計算、論理的思考を扱い、右脳は音楽、直感的・非言語的世界をつかさどる。この脳の働きの一部が日本人と欧米人で異なるというのが、いわゆる「角田理論」である。
欧米人の脳は左で理性的認知、右で感性的認知とはっきり分かれているのに対し、日本人の左脳には理性的・感性的認知が混在している。母音、笑い声・泣き声などの感情音、風の音・虫の鳴き声のような自然音、邦楽器の音などを、日本人は欧米人とは逆に左脳で処理する。したがって、ため息・せき・嘆声などが音楽の途中に入ってくると、スイッチが左脳に切り替わり、音楽鑑賞が妨げられる。そのために日本の音楽会は静かなのである。
脳の機能の違いは、文化の差をもたらす。欧米文化の論理性、知的に自然と対決する姿勢に対し、日本文化は非論理性、情緒性、自然との融和を特色とするが、この違いは聴覚を通しての自然界の認知の仕方からくるものだと言う。
角田理論は、今はやりの日本人論や日本文化の科学的根拠になるものとして、たいへんなブームになった。湯川秀樹博士は、「近来こんなおもしろい話を聞いたことがない」といったくらいである。
日本語が原因
日本人の脳がこういうしくみになった原因は、母音優位の日本語にあると言う。欧米語(例えば英語)では、「子音+母音」(go),
「子音+母音+子音」(cat)
の音節が言葉の単位になるので、母音それ自体意味を持たず、楽音として右の音楽脳で扱われる。これに対して、日本語の母音は、「い」(胃)、「え」(絵)
のように単独でも意味を持つので、言葉として左の言語脳で処理される。母音と構造のよく似た多くの自然音も、同じように左脳で扱われることになる。
人間の脳は生まれたときは世界共通、生後6歳ぐらいから9歳までの使用言語によって型が決まる。今のところ、日本人と同じ脳の型は、母音の多いポリネシア語を話す人たちだけということである。同じ日本人でも欧米語を母語とする日系二世は欧米型の脳になる。
(「JAPAN AS IS−日本タテヨコ−和英対訳版P.42」 by Gakken Co., Ltd.より引用)
河合 将介( skawai@earthlink.net ) |