日本からのニュースによると、オレオレ詐欺(最近は「振り込め詐欺」と総称されているそうですが)の被害が相変わらず多く、特に高齢者が集中的に狙われているようです。
この詐欺は、電話やはがきなどの文書などで相手をだまし、金銭の振り込みを要求する犯罪行為のことで、架空請求詐欺、融資保証金詐欺、還付金等詐欺などに分類できるのだとか。
その手口として一番多いのは、いわゆる「なりすまし詐欺」というやり方で、「俺だよ、オレオレ」、「わたし、わたし」、「お母さん……」「久しぶりだけど、覚えてるかな?」などと装った電話をかけ、「交通事故や医療事故を起こして示談金が要る」、「タクシーやバスに会社の小切手や預金通帳の入ったカバンを置き忘れてしまった。お金を貸して欲しい」などの虚偽の急用を訴えて現金を預金口座等に振り込ませるなどの方法によりだまし取る方法だそうです。
この場合、縁者を装うだけでなく、警察官、弁護士、交通事故被害者、性犯罪被害者を装う手口もあるとのこと。これがオレオレ詐欺(振り込め詐欺)といわれる所以です。
これらは別名「親心利用詐欺」、「母さん助けて詐欺」ともいわれるほど、高齢者(父母、祖父母など)が被害者になるケースがしばしばで、女性が約7割、60歳以上が全体の約8割。被害世帯の半数以上は、家族構成が65歳以上だけの「高齢者世帯」といわれます。加害者は息子や孫を名乗るわけです。
以上は日本での当該詐欺についてですが、こちらアメリカ合衆国でもこの種の犯罪は聞きますが、どちらかというと高齢者を狙うというより、偽の慈善団体をかたって振込みを要求する詐欺や、嘘の賞金当せんを知らせて手数料を振り込ませる詐欺などが一般的のようです。
先日、当地の日本語新聞「羅府新報」のコラム欄『磁針』に楠瀬明子さんという方が次のようなコメントを寄せていました。興味を惹かれましたので、その一部を以下に転載させていただきます。
(前略)私の知る限りアメリカは親子の愛情の絆は強くとも、金銭に関しては子は早くから自立している国だ。電話で窮状を聞かされた親や祖父母が、富豪でもないのに、息子や孫の失敗の尻拭いに即座に何万ドルも出すなんて、聞いたことがない。これに対し日本は、大学進学費用も通常は親が負担するなど、親子の金銭的つながりが長く続く。つましい暮らしで子供の進学・結婚費用を捻出する日々が過ぎ、年金暮らしとなっても生活は質素のまま。そのため意外と数百万、数千万円と持っている高齢者も少なくなく、再び息子や孫のためならと金を出すのもありうること。思えばオレオレ詐欺は、こういう事情に乗じた「非常に日本的」な犯罪に違いない。
(後略)《12月5日付、羅府新報『磁針』より》 |
いわれてみれば、私の周囲のアメリカ人たちも、大学のための学費は奨学金を受け、不足分は自分で工面したという人が多く見られます。この場合の工面とはアルバイトをして学費を稼ぐか、親族などからの借金またはその両方です。親に全面的に依存したという例はまれのようです。いわんや、社会人になってからも親のスネを齧っていることはめったにないでしょう。そういった意味で、「オレオレ詐欺は日本的犯罪」という上記の楠瀬明子さんのコメントに私も賛同の一票を投じます。
河合 将介( skawai@earthlink.net ) |