日本からのニュースによると、歌手の島倉千代子さんが肝臓がんのため亡くなったとのことです。島倉さんといえば「泣き節」と呼ばれた独特の歌唱法を駆使して、私たちの世代を魅了した叙情演歌の第一人者でした。彼女は1938年(昭和13年)生まれ(75歳)であり、私とほぼ同じ時代を生き抜いた人でした。美空ひばりさんと並び称される昭和を代表する女性歌手といえるでしょう。
美空ひばりさんは私と同じ1937年(昭和12年)生まれでした。ただ、彼女は1989年(平成元年)に52歳という若さでこの世を去っているので、私自身にはあまり実感はありませんでしたが、今回の島倉千代子さんの訃報には私もそこに自分の年齢に重ねあわせ、少々感傷的になり、変化を感じています。
もう半世紀以上も前になりますが、島倉千代子という歌手の歌がラジオで流れ、私もその哀愁を帯びた可憐な歌声に心を奪われたひとりでした。デビュー曲「この世の花」は当時としては驚異的な売り上げである200万枚達成、映画化もされました。
☆この世の花(詞:西条八十、曲:万城目正)
1、あかく咲く花 青い花
この世に咲く花 数々あれど
涙にぬれて 蕾のままに
散るは乙女の 初恋の花
2、想うひとには 嫁がれず
想わぬひとの 言うまま気まま
悲しさこらえ 笑顔を見せて
散るもいじらし 初恋の花
3、君のみ胸に 黒髪を
うずめたたのしい 想い出月夜
よろこび去りて 涙はのこる
夢は返らぬ 初恋の花 |
青春期真っ盛りの同世代の若者には女神の響きに聞こえたのでした。その後、彼女は「りんどう峠」、「東京だョおっ母さん」、「逢いたいなァあの人に」、「からたち日記」など、次々とヒット曲を世に出し続けました。
私が東京オリンピック(1969年)を契機にテレビ(白黒)を購入し、自分の部屋で画像を見られるようになったあるとき、はじめて実際に歌う彼女(島倉さん)の動画を目の当たりにし、その魅力にひきつけられ、ショック状態になったことをその時の画面とともに今でも鮮明に思い出します。
私はどこから入手したのか忘れましたが、芸能雑誌を飾る彼女の写真を切り抜き、額縁にいれて本棚に飾りました。もっとも、外部からは見えないように額の表面には弥勒菩薩(奈良、広隆寺)を入れ、弥勒菩薩の後ろにそっと見えないように入れていました。
あれから半世紀以上が経過し、私もいろいろ経験をしましたが、「この世の花」で初恋を歌った島倉さんは一般人には到底想像もつかないほどの人生経験をしたそうです。離婚・負債・乳がん・・・山あり谷ありの人生だったようです。まさに彼女の最後のヒット曲といわれる「人生いろいろ」の歌詞そのものだったようです。
☆人生いろいろ(詞:中山大三郎、曲:浜口庫之助)
死んでしまおうなんて
悩んだりしたわ
バラもコスモスたちも
枯れておしまいと
髪をみじかくしたり
つよく小指をかんだり
自分ばかりをせめて
泣いてすごしたわ
ねぇおかしいでしょ若いころ
ねぇ滑稽でしょ若いころ
笑いばなしに涙がいっぱい
涙の中に若さがいっぱい
※人生いろいろ 男もいろいろ
女だっていろいろ 咲き乱れるの※
(以下略) |
昭和という時代が一つひとつ消え去ってゆく寂しさを感じざるをえません。このようにして時は流れ、時代が過ぎてゆくのでしょうか。
河合 将介( skawai@earthlink.net ) |