前回の当欄でアメリカの肥満問題について書きました。肥満は容姿だけの問題だけではなく、健康問題、医療費の問題でもあり、国家としても重大問題です。当地の日系新聞である羅府新報10月27日号に『飢えて太る「貧しい米国」の実態』と題する記事が掲載されていました。以下、その記事の一部を引用させていただきます。
食べるものに事欠くほど貧しいのに、極端に太った米国人が急増中だ。飢えをしのぐため安価なファストフードに依存するのが原因だが、人種間格差や家庭崩壊などの病理も背景に潜む。不況の長期化で、オバマ政権が重視する中流階級からの脱落も拡大。貧困と肥満が全米最悪の南部ミシシッピ州で実態を追った。400ポンド(150キロ)を超す巨体を右手の杖で支え、黒人女性のマリー・ジョンソンさん(56)は全身を震わせて歩いていた。教会に早朝から並び、チキンナゲットやパンなどの支援物資を手にいれるためだ。糖尿病と高血圧症を患い失業中だが、14歳と13歳の孫二人を養わねばならない。月収は社会保障給付金の567ドル(約4万6千円)のみ。325ドルの家賃を払えば幾らも残らない。孫たちの母親は心臓病でなくなり、父親は姿を消した。「とにかく腹を満たす」ため、安価で高カロリーなフライドチキンやフライドポテトで育てた孫も肥満体だ。
農務省によると、ジョンソンさんのように食べるものが何もない状況を定期的に経験する住民は、人口約290万人の同州で50万人超。年収などを基準に算定した全米の貧困人口(四人家族なら年間所得約2万2千ドル未満)は過去最多の4356万人にのぼる。総人口に占める割合を示す貧困率は14.3%で、肥満率(身長170センチなら体重約87キロ超)も26.7%に増加。貧しいほど肥満率が高く、同州は糖尿病や高血圧症の罹患率も全米1、2位を争う。
肥満をもたらす生活習慣と貧困が親から子へと引き継がれ、社会の底辺に固定する「負の資産」を指摘する。「教育も技能もなく最低賃金の職しか見つからず、給付金をもらったほうが割がよいから働かない。健康や教育には無関心。子も学校を中退し、同じことを繰り返す」
2008年の金融危機以降は中流階級から転落した「新貧困層」が増加した。08年の大統領選ではオバマ氏に投票したこれらの大衆が「経済再建の約束を果たしていない。もう待ちくたびれた」11月2日の中間選挙で民主党に投票するつもりはないと言う。(羅府新報10月27日号より引用) |
はたしてこの11月2日に実施された米中間選挙で、オバマ大統領率いる民主党は歴史的な大敗をきっしました。日本もアメリカも2年前の政権交代でわいた民主党は今や見る影もない悲惨な状況になってしまったようです。特にオバマ大統領が2年前の就任式の際、米国中が熱狂的に新政権を迎え、期待したあの時の熱気がうそのように思えます。経済政策を中心に高まったオバマ政権への不満が与党である民主党への強い逆風となったのは確かでしょう。もっとも政治は決してマジックでもなければ特効薬が存在するわけでもないので、オバマ政権だけの責任ではないでしょうが、政治は結果責任といわれ、残る2年間でオバマ大統領がどこまでアメリカ経済を立て直すか注目です。
河合将介(skawai@earthlink.net) |