日本では5月1日からガソリン税などの暫定税率復活を受け、各地の製油所から出荷されるガソリンに再び暫定税率(1リッター当たり25.1円)が上乗せ課税されました。小売り側では即日値上げしたスタンドや、4月下旬水準に据え置くところなど、対応もまちまちで混乱があったと報道されています。
報道によると、日本のレギュラーガソリンの全国平均小売価格は4月末現在で130.6円(リッター)ということですので、今回の暫定税率復活により日本のガソリンは155円から160円くらいになってしまうことでしょう。折角のゴールデンウイークに水(油?)をさされた日本の庶民の反感をかうことは必定であり、そのタイミングの悪さに現首相は“KY”のレッテルを貼られ、お気の毒です。
ところで、こちら米国でも日本と同様、ガソリン価格の高騰が続いています。街のガソリン・スタンドではレギュラー油でも1ガロン当り$4に近づいています。数年前までは$2以下(ガロン)、昨年の今ごろでも$3以下(同)だったと記憶しています。
1米ガロンは約3.8リッターですので、この価格はまだまだ日本国内の皆さんにとっては羨ましいほど安い価格(米国の現在価格である$4/
ガロンでも、リッターあたり約¥110です)なのかもしれません。
ただ、問題は価格の絶対値ではなく、上昇トレンドであり、ガソリンのような基幹エネルギーの価格上昇は多くの物価に影響するので、数年で2倍以上の価格上昇は国家経済のみならず、一般家計にも大きく影響しています。米国のGDP(国内総生産)もこのところ伸び率は低く、経済は低迷局面といえるでしょう。
話題は再び日本に戻りますが、私は最近、日本のインターネット・ニュースで「細切れ雇用」という日本語を知りました。東京のNPO法人「自立生活サポートセンター・もやい」に助けを求めてきた男性の財布の中身は小銭ばかりで100円ほど。前日に古本屋で本を売った400円の残りだったとのことです。
この男性は1999年の就職氷河期まっただ中に都内の私立大学を卒業し、派遣労働者として働きながら就職活動を続けたが就職先が決まらない。派遣会社10社以上に登録し、契約が切れると清掃業務や建設作業などで食いつなぐ日々だったとのこと。たまに採用されても契約社員扱い。雇用先数が多すぎて全部は本人も思い出せないほどだということです。――― このような雇用形態を「細切れ雇用」というのだそうです。
この男性の場合、ほかのアルバイトも含めても月の手取り額は数万円で、4畳半一間の風呂なし、共同便所の部屋での毎日なのだそうです。布団はなく、2枚の毛布の間に入って眠り、1回430円の銭湯は高いのであきらめる日々とのこと。本人は懸命に働き、また働く意欲もあるのになぜこのような悲惨な状況が生まれてしまうのでしょうか。
1年間働いても200万円以下しか収入がない、“ワーキング・プア(働く貧困層)”が06年に1千万人を超えたといわれます。
“ワーキング・プア”、“細切れ雇用”、“非正規社員”、“労働ダンピング”、“偽装請負”など、格差社会を象徴する言葉が飛び交っているようでは日本も一流先進国とは言えません。国家の繁栄はひとりひとりの国民の生活向上が欠かせない条件です。
日本は諸外国に比べれば格差の少ない社会国家といわれています。ところが最近はその格差が拡大する傾向にあるのではないかとの危惧が否めません。適正・公正な労働分配率はじめ、格差拡大を防ぐ努力を皆で真剣に考える必要があるのではないでしょうか。
河合将介(skawai@earthlink.net) |