私のパソコン不調のため2週にわたりこの欄に原稿が送れず休みました。あいも変わらず好奇心のおもむくまゝあれこれいじくりまわしたのが故障の原因でした。
この冬(2008年1、2月)はこちら米国、南カリフォルニアのロサンゼルスも例年に比べ気温が低く、外出時にはセーターやコートが欠かせない日々が続きましたが、“逃げ月”2月が終わるとともに早くも気温も上向き、戸外は一気に春のモードといった気配です。
ロサンゼルスの春はまずハリウッド(コダック・シアター)恒例のアカデミー賞授賞式とともに訪れます。今年のアカデミー賞授賞式は第80回記念の催しとして先週の日曜日(2月24日)に華々しく開催され、ロサンゼルス、特にハリウッド周辺は大変賑わいました。
といっても今年の我が家はテレビ中継で授賞式の様子を観ていただけですが・・。でもさすがハリウッドであり、きらびやかで華やかな授賞式の様子がテレビ画面を通じて充分伝わってきました。
尤もその後のリサーチによると、ABCテレビが独占中継したこの授賞式の視聴者数は前年比約20%減(推定3,200万人)で、記録を取り始めた1974年以降では最低だったようです。といっても、これだけ多くの人々をテレビの前にくぎ付けにするのですから、アカデミー賞の魅力と権威はたいしたものです。
今回の授賞式ではコーエン兄弟監督の「ノーカントリー」が作品賞を始め、監督賞、助演男優賞、脚色賞の四冠を獲得したのが印象的でした。外国語映画賞にノミネートされていた浅野忠信さん主演の「モンゴル」は賞を逃し、また、「マッド・ファット・ワイフ」でメーキャップ部門の候補だった京都府出身の辻一弘さんも賞に届かなかったのは日本人して少々残念でしたが、ノミネートされただけで充分誇れることだったと思います。
華やかなアカデミー賞授賞式の中で、昨年の物故者紹介がありました。その中に今から50年前の1957年の映画「サヨナラ」で日本人の俳優として初のオスカー(アカデミー賞)を手にした故ナンシー・梅木さんの紹介があり、私にとって懐かしく、胸にくるものを感じました。
もうひとつ、こちらで春を感じるのが桜の開花です。ロサンゼルスは毎年2月下旬から3月上旬が桜の花の季節で、市民はお花見を楽しみます。今年は例年より低温の日が続いたので、若干開花が遅れていますが、でも既に蕾が膨らみ咲き始めています。
ロサンゼルス近郊で最高の桜の名所はロサンゼルス・ダウンタウンの北西20マイル程にあるロサンゼルス市の“リクリエーション並びに公園局”が管理をしている公園で、ここには三つのゴルフコース、スポーツセンター、日本庭園(水芳園)、ピクニック場その他各種施設が整った総合リクリエーションの場なのですが、その中の一角にバルボア湖(Lake
Balboa)という湖があり湖畔に約二千本の桜の木が植えられています。2月24日(日)に私たち夫婦は今年最初の開花下見に行ってきましたが、まだ開花にはいたっていませんでしたが、3月はじめには一斉に蕾を開きそうな風情でした。
実はこれらの桜の木々は日本の匿名の企業の寄贈によるもので、1992年に植樹が始まりました。もともと、ここロサンゼルスは気象条件、土質などの理由で桜を育て、花を咲かせることは出来ない土地と言われていたのですが、(桜の花にとって必要なことは、暖かな春だけではなく、寒い冬、良い水はけ、適切な地質、病害虫が無い・・など、数多くの条件が満たされなければならず、また育ったとしても花と葉が同時に出現してしまうのだそうです)専門家に依頼して調査と研究に二年間を費やし、オオシマザクラという品種をベースに改良を重ねたピンク・クラウド(Pink
Cloud)という品種に辿りつき、それがこの場所に植えられたのだそうです。(このピンク・クラウドは日本の桜をこちらの土になじませるため、現地のさくらんぼの根に接木をしているのが特色です)
樹木自体はまだ若く、ほとんどの木が20フィート位ですが、毎年濃く鮮やかなピンク色の花を見事に咲かせます。これからの成長が楽しみです。
また湖の周囲十ヶ所に立派な藤棚もあり、これも同じ日本企業の寄付によるものです。湖(といっても下水処理水を集めた人工湖ですが)には沢山の水鳥が戯れ、広く明るい湖畔は、桜の季節以外でも充分素晴らしい環境です。“貸ペダル・ボート”に乗ったり、湖畔でバーベキュー・ピクニックをしたり、遊園施設で楽しんだり、一人でも、二人でも、家族全員でも楽しむことが出来る、思いきり明るいところです。
この公園はロサンゼルス市の公園局の管理下にあり、日の出から日没までゲートが開き、その間なら無料で自由に入園できます。夜間は立ち入り禁止ですので日本流の夜桜見物は出来ません。また、公園内へのアルコール類は常時持ち込み禁止ですので、酔っ払いはいません。折角のお花見なのにアルコール抜きとはちょっと淋しい感じもしますが、これはこれで家庭的、健康的で良いことでしょう。
アメリカの桜といえば首都ワシントンDCのポトマック河畔の桜が有名ですが、こちらロサンゼルスのバルボア湖畔の桜も、年とともに成長し市民から愛され絶大な支持を得ています。いつの日か「東のポトマック河畔の桜」に対し「西のバルボア湖畔の桜」と並び称される日がくるのではないかと期待しています。
年間を通じて雨量の少ないロサンゼルスですが、それでもこれから各種花の季節を迎えます。カリフォルニア・ゴールデンポピー、ラナンキュラス、ブーゲンビリア、ジャカランダなどなど・・。ロサンゼルスはこれから花の季節を迎えます。
河合将介(skawai@earthlink.net) |