十数年前から不規則生活や不摂生がたたり、血糖値、血圧、コレステロール値が高くなり、生活習慣病にかかってしまった私です。それ以後医師からのすすめで食餌療法に取り組むと同時に運動をすることにし、室内用トレッドミル(ルームランナー)を買い込み、以後十年あまりにわたって自宅にいるかぎり毎日一時間のトレーニングをすることにしました。
今のような気温の比較的低い時期でも、一時間の運動は私にはたいへん効果があるようで、処方薬の服用を続けてはいるものの、現時点では血糖値ほか正常に近いものになっています。
このトレッドミルによるトレーニングは、自宅内での運動なので、トレパン姿で誰に遠慮することなく没頭できます。私にとって毎日のトレーニングは肉体的に厳しく、つらい一時間ですが、なぜか始めて三十分も経つと苦しさが徐々に快感に変わってくることに気がつきます。
毎回、スタート時は面倒臭さや気だるさなどで毎回ためらうのですが、それを乗り越え、嫌々でも無理してはじめると、はじめは疲れと息切れで苦痛を感じますが、三十分を経過する頃から苦痛が低下し、徐々に快感が出てきます。
一時間の日課が終了するとシニア年齢の私のからだは汗にまみれ、ほぼ体力の限界を感じますが、精神的には目的を達成した快感に浸っています。最近では旅行などで日課のトレーニングをしないでいると、なにか物足りなく無性に体を動かしたくなるのにから不思議です。
最近読んだヒトの脳に関するエッセイよると「幸せという情動を脳科学の立場から説明すると、行動の報酬として脳内に分泌されたドーパミンが引き起こす化学反応となる」のだそうです。(「幸せと脳科学」北山吉明氏著)さらに同エッセイによると「分泌されるドーパミン量に比例して、幸福感に強弱が出来る」と書いてありました。
私の場合、つらいはずの日課トレーニングで、脳内に幸せと快感を引き起こすドーパミンが出るようになったのでしょう。そう思うと、ますます日課のトレーニングが苦にならなくなりました。
さらに今回読んだ北山氏のエッセイによると、ダイヤモンドをみて“炭素”と言うよりは“アフリカの星”と呼ぶほうが心が躍るものであり、心がわくわくしたら「今ドーパミンが出てる」なんて思うよりも「なんだ、この気持ちは!」と驚くほうがもっと多くのドーパミンが出てわくわくするのだそうです。やはり豊かな人生を育てるのは、不可思議な人間の心そのものなのかもしれません。
私も科学の真実は真実として尊重しますが、喜怒哀楽の感情はやはり崇高な心の問題として理解し、大切にしたいと思う一人です。
日課のトレーニングのおかげで昨年も元気に過ごすことができました。私のトレーニングは妻が毎回きちんと記録をつけてくれ、その記録によると、昨一年間、私の総歩行距離はほぼロサンゼルスからラスベガスまでの1.5倍の距離に相当しました。
トレーニング終了後シャワーを浴び、冷やした豆乳を大コップ一杯ぐっと飲み干すとさらにドーパミンが湧き出るようで、このときが私にとって最高に充実した一瞬です。 河合将介(skawai@earthlink.net) |