何かと話題の多い宮崎県の東国原英夫知事ですが、先月末も「徴兵賛意発言」で注目を浴びていました。新聞報道によると11月28日に宮崎市内で開かれた県民から直接意見を聞く「県民ブレーン座談会」で「僕は徴兵制はあってしかるべきだと思っている。若者は1年か2年ぐらい自衛隊か、ああいうところに入らなければならないと思っている」と述べたとありました。
もっとも彼の発言の真意は、決して国家の軍国化でも戦争賛美でもなく、あくまで今の若者にはきちんとした規律が身につく教育が必要であり、そういったものの欠落が社会の道徳や倫理観の喪失につながっているのではないか、ということのようです。
その真意が充分伝わらず曲解されたため、彼は翌日弁明の記者会見にのぞみ、前日の徴兵制に賛意を示したとされる発言について「徴兵制を容認していない。戦争に直結するものでは全然ない」と弁明し、同時に「徴兵制」発言について「社会のモラルハザード、規範意識の欠落、希薄化はどういうところで補うのか。学校教育が補えない中で、心身を鍛錬する場が必要ではないかと言いたかった」と釈明しています。
「この国の道徳観の崩壊を心配しての発言と解釈してほしい」とした上で、知事は「例えば徴農制とかで一定期間、農業を体験するとか、介護、医療、災害復興
の手伝いなどをある程度強制しないと今後の担い手不足、社会構造の変化についていけないと危惧(きぐ)している」と強調していました。
東国原知事の最初の「徴兵制」発言は、いかにも彼らしいと言えばそれまでですが、やはり言葉の選び方に問題ありと言わざるをえません。しかし、私はその発言の真意自体にはまったく同感です。
私を含め、戦後の教育としつけを受けた今の日本人は、個人の権利や自由は主張できても、社会人としての道徳・倫理について、どれだけ身につけているか疑わしい光景をしばしば目にします。
自分の意のままにならないと前後の見境もなく、すぐキレてしまう若者が増加し、それが学級崩壊、不登校、ニートなどにつながっています。その上、社会秩序を身をもって示すべき家庭内も乱れ、親が学校に、患者が病院に必要以上に無理難題を突きつけて憚らない時代になっているようです。
日本ではモンスター・ペアレント(学校などの教育現場で教師に理不尽な要求を突きつける親を怪物に喩える)、モンスター・ペイシェント(医療従事者や医療機関に対して自己中心的で理不尽な要求・暴言、はては暴力を繰り返す患者)などという和製英語まで出現しているのだそうです。(出典:フリー百科事典ウイキペディア)
個人の権利・自由も結構ですが、権利・自由を主張する大前提には社会秩序を保つ義務があることを身につける必要があること知るために“徴兵制的強制力”も時には必要なのではないでしょうか。 ――― 以下、次号へ続く ―――
河合将介(skawai@earthlink.net) |