――― 前号よりの続き ―――
この本(藤原正彦著、「国家の品格」)の第二章(「論理」だけでは世界が破綻する)に日本人小学生への英語教育の是非についての記述があります。
「・・現在、(日本)全国の九割以上の小学校で英語が教えられています。私に言わせれば、小学校から英語を教えることは、日本を滅ぼす最も確実な方法です。公立小学校で英語など教え始めたら、日本から国際人がいなくなります。英語というのは話すための手段に過ぎません。国際的に通用する人間になるには、まずは国語を徹底的に固めなければダメです。表現する手段よりも表現する内容を整える方がずっと重要なのです。・・」「・・内容がないのに英語だけは上手いという人間は、日本のイメージを傷つけ、深い内容を持ちながら英語は離せないという大勢の日本人を、無邪気ながら冒涜しているのです。・・」
現在、英語が最大の国際語となっている以上、英語が出来ないより出来たほうが良いに決まっています。しかし、人間形成の最重要期である小学校での限られた時間では、たしかに国語、算数、歴史などの基本を日本語でしっかり学ぶのが優先でしょう。
以前、私はある日本の大学生から『世界で活躍するビジネスマンに必要なものは何ですか?』というたいへんな難問をE-Mail
で受けました。以下、彼からの質問メールに対する私の回答メールを以下に記し、読者の皆さんのご意見をうかがいたく思います。
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普通、「世界で活躍するビジネスマンに必要なもの」 という質問をすると、多くの自称 「国際通」の人は 「国際感覚を身に付けること」
と返事をします。そんなことは当たり前で、その 「国際感覚」 とは何かが問題なのでしょう。
国際感覚とは外国語に堪能になったり、外国の風俗・習慣・マナーに詳しくなることばかりではありません。これらはもちろん重要ですが枝葉末節なことであり、もっと基本とすべきものがある筈です。
私流に敢えてその基本を言うなら、それは 「自分を知る事、日本を知る事。そして自分が日本人であり、日本人としての ID を明確にすること」
だと言えると思います。
私達は自分について、日本についてどれだけ良く理解しているでしょうか?
「国際感覚」 と言っても、これが 「国際感覚である」
と言った絶対的なものはない訳で、あくまでも何かと比較して初めて知り得るものです。その場合何と比較をするかと言うと、私達の場合は 日本
または 日本人としての自分と言うことではないでしょうか。
日本も ナショナルの時代から インターナショナルの時代になっており、更に世界は
トランスナショナル(ある意味のボーダレス)の時代に向かっています。
ナショナルとしての ID 無しに 何で
インターナショナルになり得ましょうか。インターナショナルをしっかり確立しないで何でトタンスナショナル に移行できましょうか。
日本から駐在員がアメリカへ赴任してきた時、自分の子弟の教育について日本語を中心にするか、英語を中心にするかという問題は、親にとって重大事です。
きちんとした方針と信念の下に決めるのであれば この場合、どちらにしても間違いはありませんが、よく 親によっては
折角アメリカに来たのだから 子供は アメリカの現地校に通わせれば、国際語である英語が出来、国際感覚が身について良いだろうと
安易に考える親がいます。
こんな安易な考え方で現地校に入れられた子供は気の毒です。(尤も、この場合、現地校とその先生にとってはもっと迷惑な話ですが・・)
この場合、その子は 国際人にもならなければ、多国籍人でもなく、ただの 無国籍人 にしかなりません。
私が会社を引退する前、日本の親会社より赴任する人から 「
3ヶ月後にアメリカへ赴任する事が急に決まりましたので、私は妻と2人であわてて英会話学校へ通っています 」 という挨拶状が届いたので、私は
「今更 英会話の勉強をする暇があったら、もっと日本の事を勉強してきて下さい」 と返事を出したことがありました。
一般的に言える事は、どうも日本人は自分の ID ( 自分と言うモノサシ)が曖昧で、客観的に他のものを測るのが苦手のようです。
日本人の持っているモノサシは伸縮自在で曖昧な 「 生ゴム 」 製ではないかとさえ思うことがあります。(これはこれで
日本人のよいところなのですが)
でも、これから海外へ出る人にとっては、最も重要なのは海外へ出てから見聞き・経験をしっかりと見極められる自分の IDではないでしょうか。
極論を言えば 私はこれが 「国際感覚を身につける」 ということだと思っています。 そして
その次にようやく個々の具体的な話が始まるのだと思います。
その具体的な話は また何時かお会いした時にいたしましう。
――― 次号へ続く ――― 河合 将介(skawai@earthlink.net)
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