ビジネス現役時代の不摂生がたたり、私も“生意気にも”十数年前から血糖値、血圧、コレステロールが高くなり、生活習慣病と仲良く(?)一緒に暮らしています。嘗ては成人病と称していたこの病も最近は若年層にもはびこり、年齢とはあまり関係ない生活習慣に関する疾病とみられるようになっています。
今から十数年前、急に咽喉の渇きを覚えるようになり、慌ててドクターの診察を受けたところ、空腹時の血糖値が何と330もあることが判明しました。一般に成人の場合、空腹時の血糖値が100〜120位を超えると糖尿病、または糖尿病予備軍と云われているようで、330などという高い値はとんでもない数字であり、この時ドクターから「即入院、要治療」を申し渡されました。
しかし、当時の私は企業の駐在員であり、自称「熱烈たる海外戦士」でした。これしきのことで戦場離脱など・・、と入院は断固拒否し、ドクターを説得して通常の生活をしながら治療することにしたのでした。
ドクターから薬を処方してもらい、食餌療法、運動療法の指導を受け実行することにし、今にいたっています。
肥満は万病のもとと言われますが、私もホーム・ドクターからまず体重の減量を指示されました。
あるときドクターから「次回の定期チェックまでに5ポンド(約2.3kg)減量してください」といわれ、「なあんだ、たったの5ポンド減らすだけでいいんですか?」といった趣旨のことを下手な英語で口答えしたところ、「あなたは今まで、それすら出来なかったではないですか!」ときつく叱られたこともありました。
7年前のある時は「次回の診察時までに血糖値が下がらない場合は、インシュリンの注射を毎日数回、自分で打ってもらうことになります。この練習用注射器セット自宅へ持ち帰り、オレンジを自分の身体と見立て、注射を打つ練習をしておいて下さい」などとも言われました。
インシュリン注射の警告は、さすがに私にとってショックでした。そこで私は“身を入れて”血糖値対策を実施することにしました。
それまで中途半端だった食餌療法もまじめに取り組み、暴飲暴食は厳に慎み(企業の定年を迎え、義理のお付き合いが減ったことも幸いでした)、そして最も気合を入れたのが運動(エクササイズ)でした。
ビジネス引退者の私ですが、日中は何かとあわただしい身であるので、昼間のエクササイズ継続実行は不可能だったので、夜間に自宅でトレッドミル(ルームランナー)マシンを使ったエクササイズをすることにしました。
98年末のクリスマスの翌日、さっそく機械を買い込み私のエクササイズがスタートしました。以後7年余り、私は日本行きなどによる外泊日以外、風邪ひきや特別な例外日を除いて殆ど毎日1時間のトレーニングを欠かしていません。
就寝前の1時間はトレーニングの時間と決め、どんなに夜が遅くなっても(たまに午前様の帰宅の場合も)トレッドミルによるエクササイズを実行することにしています。
幸い、朝の出勤という義務から開放されていますので、午前1時であろうが、2時であろうが、翌朝早く起床しなくて良い身分である私はゆっくりトレーニングを実行出来るわけで、この点は恵まれており、ありがたいことです。
家の中でのエクササイズですので、見ているのは我が妻だけです。遠慮なく下着だけの格好でやっています。
1時間のエクササイズでパンツと肌着はまさにずぶ濡れ状態、絞らなくても沁みた汗がしたたり落ちそうな状態になります。
そこで濡れた下着を脱ぎシャワーを浴び、冷やした豆乳を大コップ一杯ぐっと飲み干す――― 最高に充実した一瞬です。
毎日1時間のトレーニングは私の場合、たいへん効果があり、その後体重が安定し、血糖値・血圧・コレステロール値も正常に近いものになりました。(尤も、ドクター処方の薬は毎日夜飲んでいます)おかげさまでインシュリン注射も今のところ未実行です。
人間はもともと、野山を駆けまわったり、田畑を耕したりして身体を使い労働するように出来ているようで、身体を動かさなければならない生き物であることを実感した次第です。
最初の頃は苦痛であった毎日のトレッドミルによるエクササイズも続けているうちに自分の日課の一部となり、最近では身体がエクササイズを要求し、実行しないと一日が終わらない気分になっています。
糖尿病のおかげでエクササイズを覚え、日課のエクササイズが身体に生命の充実感を与えてくれる。「一病息災」とはこんなことを意味するのではないでしょうか。
河合 将介(skawai@earthlink.net)
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