米国世論を二つに分けたアメリカ合衆国大統領選挙は現職ジョージ・W・ブッシュ氏が再選され決着しました。
今回の投票日(11月2日)には大統領選挙と同時に上下両院議員選挙や各種の住民提案(プロポジション)の賛否についての投票も行なわれました。
ここカリフォルニア州では16項目の住民提案が賛否投票にかけられました。(その他ロサンゼルス郡、ロサンゼルス市でも各1の提案がありました)
これらの住民提案の中でも全国的に注目されたのが「<ヒト胚性幹細胞(ヒトES細胞)研究>を推進させる提案(提案71)」でした。
アルツハイマー病などの難病治療に効果があるとされる<ヒトES細胞研究>ですが、米国ではブッシュ大統領がクローン研究を禁止する立場を崩していないため、本格的な研究に立ち遅れているのが現状です。(ブッシュ氏はまったくES細胞研究への資金援助を否認しているわけではありませんが・・)
そこでカリフォルニア州では「住民提案」の形式をとり、州として今後10年間、総額30億ドルを<ヒトES細胞>研究資金として拠出しようというのが今回の提案でした。
<ヒトES細胞研究>推進はレーガン元大統領の息子であるジョン・レーガン氏や映画「スーパーマン」で主役をつとめ、先に脊髄損傷がもとで亡くなった クリストファー・リーブ氏、さらにシュワルツェネッガー知事も積極的に動き、その結果この提案は59%の賛成票を集め可決されました。
もうひとつ、今回のカリフォルニアの住民提案で興味をひいたのは、いわゆる「三振即アウト法」の改正を求めた提案(提案66)でした。
「三振即アウト法」とは、過去2回、犯罪暦のある人が3回目の有罪判決を受けると自動的に禁固25年以上を科すと定めたカリフォルニア州法律で1994年3月から施行されています。
この法律の施行によって州内の犯罪数は大きく減少しましたが、これは厳しすぎるので条件を緩和しようという提案でした。 ――― この提案は州知事が反対を表明したりして投票の結果、これは否決されました。
この他にも、先住民に認められているカジノ(ギャンブル場)経営の収益の一部を税金として州に収める代わりに、カジノ拡大を認める提案(提案68、70 ―― 否決)、子ども病院に財政的補助をする提案(提案61 ―― 可決)、精神障害者施設拡張のため、年収100万ドル以上の州民から1%を徴収する提案(提案63 ―― 可決)、議会から700万ドルを借り入れ、重罪や指定犯罪者のDNAサンプルを収集、州に登録する提案(提案69 ―― 可決)、などが賛否投票にかけられたのです。
住民提案(プロポジション)とは、一定数の住民による発議をはじめ、定められた諸条件が満たされると正式に登録され、選挙時に賛否投票に付されるものです。
これら住民投票が果たして本当に地域住民の提案にふさわしいものかどうか私には多少の疑念はありますが、これも“アメリカ的、草の根民主主義”のひとつと言えるのかも知れません。
河合将介(
skawai@earthlink.net )
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