前回のこの欄で『二週間後に迫った米大統領選挙』という駄文を書き、今回の選挙が前回(2000年)に比べ、いかに有権者である米国民の間で関心が高いかを述べました。
ブッシュ(共和党)・ケリー(民主党)両候補による最後(三回目)のテレビ討論会も10月13日終了し、一年近くにわたって時間と膨大な費用を使った“お祭り騒ぎ(選挙戦)”も、11月2日(火)の投票日に向っていよいよ最後の追い込みに入っています。
先日の10月12日、私たち日本人仲間が集う月例勉強会のひとつ「JACALの会(若尾龍彦氏主宰)」でもメンバーの一人で、米国事情に詳しいI氏(Ph.D.)に今回の米大統領選挙について話をしてもらいました。
この国の大統領は国際社会に対して大きな影響力を及ぼす立場であり、私たちも無関心ではいられないからです。
I氏からは複雑な選挙の実態、各方面から集めた情報を語ってもらい、たいへん有意義でした。
例えば、大統領選挙と候補者によるテレビ討論会の影響の大きさについての話には、私は今更ながら驚きました。
テレビ討論会は1960年に当時のケネディ / ニクソン両候補によるものが最初と言われており、テレビ映りが良く“格好良かった”ケネディ候補が勝利したという“伝説”が有名です。
最近行なわれた有権者(選挙登録者)へのアンケートによると、今回の正・副大統領候補者によるテレビ討論会を一度は見ると答えた人が49%、誰に投票するか決めていない約2割の有権者のうち約7割の人がテレビ討論会を見て意思決定するつもり、と答えているのだそうです。
そのため、ブッシュ / ケリー両陣営ともに、テレビ討論会のため周到な準備をし、いかにテレビ視聴者に対し候補者を印象付けるか、腐心したようです。
テレビ討論会にあたって、両陣営は32ページにわたる申し合わせ(Agreement)を取り交わしたのだそうです。その中には、
(1) ブッシュ / ケリー両候補の距離を何フィートとするか? ―― 5’11’’(180cm)のブッシュ氏にとって 6’4’’(193cm)のケリー氏との間隔が近すぎると見栄えが悪い。
(2) TVカメラの位置はどのようにし、どのように写すか?
(3) 討論は何回行なうか? ―― ケリー氏はエール大学時代弁論部の主将まで経験した人物で、デ
ィベートは得意。当初、ケリー氏は3回を希望、ブッシュ氏は2回を主張。
などといった詳細なことまで議論され、申し合わせるのだそうです。
また、テレビ討論会にあたって、両陣営とも候補者の服装、ネクタイの柄、顔の表情、メイキャップから、果ては瞬き(まばたき)の回数まで気をつけて論戦に臨んでいるのだそうで、まさに、テレビの威力恐るべしと言ったところです。
――― テレビ映りも良いけれど、有権者は肝心の討論の内容もしっかり聞いて確認してくれていると信じたいと思います。
ところで、今回の私たちの勉強会に参加したメンバーの一人で、最近米国籍を取得したというMさんから、今回の選挙投票に関し、州の選挙管理委員会から送られてきた資料(投票にあたっての案内、説明、候補者、住民投票提案一覧その他)を見せてもらいました。
かなりのページ数の冊子で、「これ全部を読まなければいけないの?!」と言いたくなるほどのボリュームでした。
カリフォルニア州に立候補登録している正・副大統領候補は何と6組もいることも知りました。
また、投票する対象は正・副大統領だけではなく、住民から提案され、賛否を問う数多くの住民提案(proposition)まで何ページも羅列されており、たいへんなことだと改めて知らされました。
世界が注目するアメリカ合衆国大統領の選挙です。有権者である米国民がどのような選択をするのか大いに注目したいと思います。
河合将介(
skawai@earthlink.net )
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