Zakkaya Weekly No.85

Ryo Onishi 12/28/97 No.84 バックナンバー  Homepage

今年も一年があっという間に過ぎてしまいましたね。読者のみなさんにとって今年はどんな一年でしたでしょうか。ワイフと私は25日から日本に来ています。日本に着いてすぐに酒屋に入り、おいしそうな地元のお酒を買ってきて楽しく飲んでいます。日中は年末の街をワイフや息子とうろうろしています。車が無いのでどこへ行くにもバス、電車で移動していますが交通費が結構かかります。財布がどんどん軽くなっていきます。年末で商店街は独特のせわしなさが感じられます。でもそんな中を歩いていて気になるのは、煙草を吸う人が相変わらず多いこと、自転車が異常に多いことですね。 (R.O)

愛 と 恋 と の 差(2)前号よりの続き

前号で書いた出版記念パーティでのスピーチで私の言わんとした「愛と恋」に関する持論をここでもう一度整理してみると次の通りです。

「愛(愛情)」とは、時間・空間を超越した存在であり、自己犠牲にも喜びを感じ得るもの(あなたの幸せ、私の喜び)、時には神と人との関係(契約)にも喩えられるものをいう。

一方「恋(恋情)」とは、一種の現象・衝動で、始まりと終わりがあり、どちらかというと自己中心(私の幸せ、私の喜び)で、これは明らかに人と人との関係(契約)のなかに存在する。

「愛(愛情)」の一つの典型として 親の子供に対する気持ちを考えてみましょう。親は我が子が何処に居ようと愛情は変わりません――日本とアメリカに分かれていても、遠いという理由から愛情が薄くなる事はありません。また自分の子は何歳になっても子供であり親としての愛情に変わりがなく我が子の幸せを願うのが普通です。即ち この場合、明らかに 時間・空間を超越し、自己犠牲のもとに成り立つ関係です。勿論 真の夫婦の関係もこの 「愛(愛情)」 による絆がベースになるものでしょう。

明治の文豪、二葉亭四迷がツルゲーネフの小説(確か「猟人日記」だったと記憶していますが)を翻訳する時、“I love you”に相当するセリフに対して「死んでもいいわ!」と訳し、「名訳中の名訳」 として歴史に残っているそうです。 「死んでもいいわ!」 とは まさに時間・空間を超越した自己犠牲の極致であり、「愛」の極致でもあると言えないでしょうか。

ここで改めて 今度は手もとの国語辞典をあたってみました。次の通りでした。(三省堂、国語辞典−第二版)

「愛」の意味:

 @(相手のしあわせや発展のためにつくす)まじりけのない、あたたかい気持ち

 A〔男女の間の〕愛情。Bものごとをたいせつに(好きだと)思う気持ち。  

「恋」の意味:

 〔男女の間で〕好きで、あいたい、いっしょになりたいと思う強い気持ち(を持つこと)。恋愛。     

別の辞典(講談社、国語辞典)には「愛」の意味のなかに次のような記述がありました。「−@~B省略、C神の、あるいは神にたいする、または純粋に理想的な、深いいとおしみ D倫理学で、他にたいする自己を主張せず、おしみなく自己を与えるという生の根本態度をもととして言う語。−以下省略−」

「恋」の旧漢字は「心の上に糸が2つ、糸と糸との間に言」と書いたのでこれを「イトシ・イトシと言うココロ」と言っていました。まさに「一緒になりたい。いとしい、いとしい」という恋ごころを良くあらわした文字でした。

先日の講演会で 渡辺淳一氏が言われた「燃えたぎる愛」、「不倫の愛」、「愛は移ろうもの」、等々は 私流の基準では 「愛」というより「恋」に分類されるものです。尤もこういうものは 人それぞれの解釈・基準があり、どちらが正解かという問題ではない筈です。 ――次号へ続く―― 河合将介

skawai@wakao.com

健康の方程式 「よい遺伝子をONにして健康で長生きしよう!西尾誠一郎

20世紀の医学上の最大の発見は遺伝子の発見と言われています。遺伝子の研究では 世界的に有名な筑波大学教授の村上和雄先生の講演を95年11月のフナイ、オープンワールドで聞き、その後その講演をもう一度テープで聞き、「生命の暗号」(サンマーク出版)を読んで、先生の生き方、考え方に深く共鳴するところがありました。ゲートウェイUSAの1月1日号には遺伝子と学習の関係について書いてみましたが、ここでは遺伝子と健康についての関連を「生命の暗号」を参考にしてまとめてみたいと思います。

ほとんどすべての病気は遺伝子の働きに関係すると言われます。遺伝が正しい形で働かないとか、働いては困る遺伝子が働き出すと病気になります。たとえば ガンは発癌遺伝子とガン抑制遺伝子があって、両者のバランスが崩れた時、発病するのです。

遺伝子の働きは病気だけではありません。目は2つ、口は1つというふうに体を作り上げるのも遺伝子の働きですし、成人になってからでも腎臓、肝臓、心臓の蛋白質も、ものすごいスピードで分解され、そして再生しているのも遺伝子の働きによるものですが、私達が行動したり、考えたりできるのは脳の働きによる物ですが、その働きも脳細胞の持つ情報、つまり遺伝子の働きによるものです。その意味では人間の一番の指令塔は遺伝子と言っても過言ではありません。

では そんな大切な遺伝子はいったいどこに存在するのでしょうか。そしてよい遺伝子をONにしたり、悪い遺伝子をOFFにする。なんて都合のいいことができるのでしょうか。

遺伝子は細胞の核のなかにあり、DNA(デオキシリボ核酸)と呼ばれています。人の細胞一個核の中にある遺伝子の基本情報量は30億の化学の文字で書かれており、これを本にすると1000ページの本で1000冊にもなるという膨大なものです。体重60kgの人は約60兆の細胞でできていますが、その一つ一つの細胞にすべて同じ遺伝子が組み込まれているそうです。ではどうして髪の毛の細胞は髪の毛にしかならないかというと、髪の毛になる遺伝子をONにし、それ以外の情報をいっさいOFFにしてしまうのです。

それでは遺伝子ON/OFFは私達の力ではどうにもできないのでしょうか。今から30年ほど前、パリのパスツール研究所で次のような実験がなされました。

大腸菌はエサとして主にブトウ糖を食べています。ブドウ糖と乳糖を一緒に与えても、大腸菌は乳糖にはまったく反応しませんでした。そこで、その大腸菌にブドウ糖をやめて乳糖だけを与えてみました。大腸菌はしばらく食べるのをやめてしまいましたが、まもなく乳糖を食べだし、乳糖だけで増えていくことができました。

これが何故、化学上の大発見だったのでしょうか。研究者が知りたがったのは、乳糖を消化する能力は、乳糖だけを与えられはじめて身につけた能力なのか、それとも前々から持っている能力だったかということです。いろいろ調べた結果、新しい環境のなかで、前もって持っていた能力が発現してきた、つまり今までOFFになっていた遺伝子がONになったことがわかったのです。

私達は遺伝というと、生まれつきだからとか、宿命だからしかたがないというふうに考えないでしょうか。「遺伝子のはたらきは、それをとりまく環境や外からの刺激によって変わってくる」 のです。環境や外からの刺激といえば、一般には物質レベルだけを考えがちですが、村上先生は精神レベル、心の持ち方がもっと大切だといっています。それらのことは新年を迎えてお伝えしましょう。それではみなさん、よいお年をお迎えください。

編集後記

今年最後の雑貨屋ウィークリーを昨年と同じように日本で編集することになりました。健康の方程式の原稿を西尾さん(ファックス)→上田さん(タイプしてEメール)→日本にいる私、のリレーで受け取りました。お蔭様でうまく編集ができました。上田さん、ありがとうございました。ホームページも更新するようトライしてみます。読者のみなさん、来年も楽しい雑貨屋にしていきますのでよろしくお願いします。ありきたりですが皆さんよいお年をお迎えください。

 

Zakkaya Weekly No.85

雑貨屋店主 大西良衛 ronishi@earthlink.net